研究課題
本研究の目的は、Mastermind-like domain containing 1(Mamld1)遺伝子欠損メスマウスの解析により、機能的黄体退縮を制御する新しい分子機構を解明することである。平成27年度は下記の成果が得られた。Mamld1遺伝子欠損妊娠マウスでは分娩遅延率が増加した。この分娩遅延は父の遺伝子型には依存しなかった。Mamld1遺伝子欠損妊娠マウスから生まれた仔では、翌日に多数の死亡個体が確認された。マウスでは主要なプロゲステロン産生器官は全妊娠期間を通して卵巣であり、機能的黄体退縮によって起こる母体の血中プロゲステロン濃度の低下が、分娩開始のシグナルとして子宮に伝わる。野生型マウスと比べて、Mamld1遺伝子欠損妊娠マウスの血中プロゲステロン濃度は持続高値を示し、その不活性代謝物である20α-OHP濃度は持続低値を示した。マウス卵巣での20α-Hsd遺伝子の発現量が上昇する機能的黄体退縮が起こると、母体の血中プロゲステロン濃度は低下する。分娩予定前日におけるMamld1欠損妊娠マウスの卵巣では、プロゲステロンを20α-OHPに代謝するために必須である20α-Hsd遺伝子の発現量が低下していた。一方、黄体組織の構造に変化はなかった。つぎに、培養細胞を用いた解析を行った結果、Mamld1遺伝子の発現抑制により20α-Hsd遺伝子の発現量は低下し、Mamld1遺伝子の過剰発現により20α-Hsd遺伝子の発現量は上昇した。以上の結果から、野生型マウスでは、MAMLD1は妊娠後期の卵巣において20α-Hsdの遺伝子発現調節を介して、プロゲステロン代謝に関与することが明らかになった。MAMLD1は、機能的黄体退縮における新規調節因子として機能していると推測される。本研究の成果は、科学雑誌に掲載された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Clin Endocrinol (Oxf). (in press).
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/cen.13080
Sex Dev.
巻: 10 ページ: 12-15
10.1159/000444938
J Steroid Biochem Mol Biol.
巻: 158 ページ: 31-37
10.1016/j.jsbmb.2016.02.010
Mol Genet Genomic Med.
巻: 3 ページ: 550-557
10.1002/mgg3.165
Sci Rep.
巻: 5 ページ: 14705
10.1038/srep14705
Anim Genet.
巻: 46 ページ: 580-583
10.1111/age.12344