本研究は、我が国において取り組みが遅れている鑑賞者開発の我が国ミュージアムへの導入を目指した実証研究である。鑑賞者開発とは、既存及び潜在的な鑑賞者の芸術への参加の増大を目指したアプローチで、英国を中心に政策等に取り入れられている。本研究では、国内外ミュージアムへの調査、代表者が所属する東京国立博物館における鑑賞者開発事業の実施及び検証、より一般化するためのオンライン調査、という3つの方法から研究を進めてきた。 平成28年度は本研究最終年度として、これまでの取りまとめとなる調査、報告、研究発表を行った。具体的には、12月5日に関東在住の一般の方を対象に、ミュージアムと人々の関係性から5分類した人々のミュージアムに対する動機等を探ったインターネット調査を実施し、828サンプルを得た。 また、インターネット調査や他の調査との比較のため、東京国立博物館において来館者への出口調査を2月1日、5日に実施し、180サンプルを得た。さらに、26、27年度に引き続き、鑑賞者開発事業「博物館で野外シネマ」において7月と10月の2回にわたり出口調査を実施した。その他、先進的な事業を実施している国内のミュージアムにおいて7月から10月にかけて担当者を対象にインタビューを実施した。対象となった館は、名古屋市博物館、森美術館、東京都美術館、科学未来館の計4館である。 研究成果の発表は、これまで実施した海外調査、国内アンケート調査等をまとめ、研究誌に投稿した(1月)。さらに、ICOM世界大会のMPR部会において鑑賞者開発と関連性の高い文化施設の地域連携について発表を行った(7月)。 調査結果からは、これまでも適宜発表してきたが、取りまとめ後の次年度以降に再度学会等で発表することを検討している。本研究により、鑑賞者開発に取り組むミュージアムが我が国にも増えて行くことが期待される。
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