本研究では、パネル保存型壁画にみられる損傷原因を追及するとともに、適した保存修復方法の検討ならびに保存管理環境の確立を目的に研究を進めた。その結果、フレスコ画は壁から剥がされることで著しく耐久性を損ない、新支持体置き換え時に用いられる接着剤の経年劣化による弊害を受けることが明らかとなった。また、保存修復方法に関しては、クリーニング時における溶剤の効果を十分に得るためには、事前に壁画層を飽和状態にすることで溶剤の内部への浸透を防ぎ、表層面でのみ反応させることが重要であることが分かった。保存管理環境としては、耐久性の低下に配慮して、定期的なコンディションチェックが重要であることが指摘できる。
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