研究課題/領域番号 |
26870897
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
佐々木 淑美 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, その他 (60637883)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トルコ共和国 / 舗床モザイク / 現状記録 / 保存修復 / 材料・技法 / 劣化対策 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる2014年度には、本科研費にて2回の舗床モザイクに関する現地調査を実施し、さらにモザイクに関する国際学会にも参加し、そこで舗床モザイクの保存修復の最先端で活躍する研究者・修復家らと意見交換をした。 調査を実施した博物館は、申請書で計画として挙げた通り、イスタンブール宮殿モザイク博物館とハギア・ソフィア大聖堂、カラデニス・エレーリ博物館、サムスン博物館で、それぞれこれまでに実施された保存修復作業の報告書を確認するとともに、モザイクの観察、写真撮影ならびに可能な場合には寸法計測や実寸大トレースを実施した。 また、次年度以降の東部・シリア近郊のモザイク群の調査実施を目指して、ハタイモザイク博物館と調査打ち合わせも済ませた。12月にすでに2015年度の調査許可を文化観光省に申請済みである。2月にはハタイで新規発掘されたばかりの舗床モザイクの調査にも参加する予定であったが、ISISによる邦人人質殺害の影響を鑑み、ハタイでの調査は延期した。この調査は情勢をみながら、今後実施できればと考えている。 新規発掘によるモザイク発見が相次ぐトルコにおいて、舗床モザイクの保存を念頭においた現状記録ならびに技法・材料研究の必要性は高く、特に分光測色計による色彩計測は、舗床モザイクの現状記録の客観化・効率化の点で現地研究者に高く評価された。このことは、本研究を進めていくうえで喜ばしい成果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画的に調査許可の申請をおこなったことで、調査を順調に進めることができている。 しかし、購入予定であった小型スキャナーは購入できなかったため、初年度は主として調査に終始してしまった。小型スキャナーを用いた三次元計測ができないという問題を解決するために、調査期間を長めに設定し、かわりに実寸大トレースを実施した。実寸大トレースは、かなりの時間と手間を要するが、詳細な観察と記録が可能となり、結果として技法考察に大いに役立つ成果となったと言える。 また、ハタイでの新規発掘モザイクの調査参加とそこでの色彩記録を依頼されたことで、本研究の意義を強く感じることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度も、現地にて調査を継続し、特に実寸大トレースの実施と、分光測色計による色彩計測を重点的におこなう。 ISISによるシリア近郊の情勢不安を鑑み、今年度も治安が安定するまではハタイなどトルコ東部への渡航はできる限り延期し、黒海沿岸およびイスタンブールの舗床モザイク群の調査に徹底する。 カラデニス・エレーリ博物館およびサムスン博物館では、発掘後に保存修復されないままに埋め戻しされ、イスタンブール保存修復研究所による修復を待つ状態にあるモザイクもあった。それらの保存修復時に立会い、現状記録と材料・技法考察をおこなう予定である。また、イスタンブール宮殿モザイク博物館およびハギア・ソフィア大聖堂での調査についても、継続して実施し、予定されているモザイクの保存修復のための基礎記録の整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が少額であったため、不必要な備品を買うよりも繰り越しが適切と判断しました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用額と合算し、物品購入時に使用したいと考えています。
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