研究課題/領域番号 |
26870898
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
藤澤 明 帝京大学, 文化財研究所, 講師 (70720960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グルジア共和国 / アルメニア共和国 / ヒ素銅 / 青銅 |
研究実績の概要 |
本研究では、1.コーカサスおよび西アジア地域を対象とし、当該地域における銅合金の合金設計技術の変遷について明らかにすること、2.これらの貴重な銅合金製資料を保存するために必要な保存修復処置方法の評価を行うことを目的としている。 1.平成26年度は、11月にアルメニア共和国とグルジア共和国において調査を行った。アルメニア共和国では、新たに研究対象とする資料を探すため、メッツモール博物館を訪問した。その結果、新石器時代から鉄器時代までの銅合金製品が収蔵されていることを確認し、分析調査を実施する許可を副館長およびアルメニア文化省より得ることができた。今後、分析調査を実施する予定である。グルジア共和国では、グルジア国立博物館を訪問し、今回初めて収蔵資料の内容調査と分析調査を実施した。収蔵している資料の多くは、1852年に設立されたコーカサス博物館から引き継がれたものである。非常に膨大な資料を様々な部署や機関で分割管理しているため、全体量の把握は困難であったが、アルメニア共和国で見つかっている銅合金製資料数をはるかに上回ることが判明した。また、初期青銅器時代および後期青銅器時代の資料約50点の分析を行った。その結果、研究対象としている最初期の銅合金であるヒ素銅製の資料が多数検出された。しかし一方で、時代が異なる資料が混入していることが示唆されたため、今後協力者とともに資料の精査を実施する予定である。今後はより年代の明確な資料を選定するとともに、初期青銅器時代から後期青銅器時代における武具類の合金設計技術の変遷を明らかにする予定である。 2.現在評価に使用する標準試験片を約40点作製中である。塩化ナトリウムを使用して強制腐食を行っており、全体が均一に腐食するまでに時間を要している。今後、試験片の事前評価を行った後、保存処置を施し、さらに強制劣化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、所属機関の変更があったが、計画通りに海外調査を実施することができた。この調査で、研究対象となる多くの資料を検出することができ、より一層の成果が期待される。しかし、国内での実験的研究については、所属機関の変更に伴い使用できる分析機が限られ、今後の遅れが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
これまではアルメニア共和国を中心に初期の銅合金製資料の分析を行ってきたが、グルジア共和国にはさらに多くの資料が存在すること、また青銅器の製作拠点があったことが明らかとなった。そこで研究の中心をグルジア共和国に移行したいと考えている。 また、国内での実験的研究部分については、所属機関の変更に伴い使用できる分析機が限られ、今後の遅れが予想される。現在、新しい所属先で機器の購入を検討しているが、同時に外部機関に分析機器の使用許可を依頼している。これらの環境を整え、実験を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付当時は、海外で使用する分析機器をレンタルする予定であったが、平成26年9月に所属先の変更があり、新しい所属機関が所有する機器を使用することが可能となった。このため機器のレンタル費用は不要になった。その一方で、前所属先では使用可能であった実験機器が使用できなくなり、新たに購入する必要があった。これらの差分として繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
未だ実験環境が十分に揃えられていない。交付当時の所属先には恒温恒湿槽が使用可能であったが、現在の所属先には設備がないため、塩類を使用した調湿設備を自作する予定であり、これに使用する。
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