研究課題/領域番号 |
26870902
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
迫田 大輔 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (40588670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近赤外分光 / 血液 / 血栓 / 人工心臓 / 体外循環 |
研究実績の概要 |
血液ポンプや人工肺等の循環器デバイス内の血栓形成を非侵襲に検出・可視化できれば、血液適合性評価や、臨床における血栓塞栓症の防止に大きく貢献できると考えられる。そこで、ハイパースペクトラルイメージング(HSI)を用いて血液凝固に伴う血液光学特性変化を明らかにし、連続流血液ポンプ内血栓の光イメージング法を開発した。 連続流血液ポンプはインペラが高速で回転しているため、その内部の血栓形成をイメージングするために、ポンプ回転数と光源の発光周波数を同期させ、ストロボ効果によりインペラ静止像を得るシステムを開発した。HSIシステムによりスペクトル画像を取得し、HSIシステムによりCCD撮像を分光し、波長600~750nm(分解能2nm)のスペクトル画像を取得て、血栓形成に伴うスペクトル変化をイメージングする画像処理システムを開発した。本システムを使用して、模擬循環回路試験およびブタを用いた急性動物実験において、ポンプ内血栓成長過程をイメージングすることに成功した。血栓のスペクトルを解析した結果、血栓形成領域では赤血球密度が周囲血液より減少していることがわかり、この赤血球密度の差から血栓を光学的に検出・イメージングできることがわかった。血栓形成域ではフィブリノゲンがフィブリンになり、フィブリンに捕捉された赤血球が周囲血流により離脱していくため、周囲と比較して赤血球密度が低下することがわかった。フィブリンの光学特性は赤血球と比較すると非常に微弱であり、本来は光学的手法で血栓を検出することは困難と考えられてきたが、赤血球を血栓出のマーカーとみなすことで、高感度な血栓光センシングおよびイメージングが可能となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的であった、インペラが高速に回転する連続流血液ポンプ内の血栓形成を達成することができた。回転同周波数のパルス光源を使用してストロボ撮影して、得られた画像から血栓形成域のスペクトル変化をイメージングする画像処理システムを開発できた。また、血栓形成域でヘモグロビン濃度が低下していることを明らかにし、ハイパースペクトラルイメージングにより、ヘモグロビン濃度の定量イメージング達成についての見通しを得た。加えて、本研究目的以上の達成として、ブタを用いた体外循環急性動物実験においても、血液ポンプ内血栓形成イメージングに成功し、臨床使用への実用性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
連続流血液ポンプ内の流速分布の定量イメージングを達成し、血栓形成領域においてどの様に流速が変化するかを明らかにする。ポンプ内流速は高速であるため、イメージングの時間分解能の向上が必要である。そこで、高速カメラと波長フィルターを組み合わせた、高速スペクトラルイメージング装置を開発する。また、血液ポンプ内の血栓がどの様に成長していくかを模擬循環回路における血栓形成実験、および大型動物急性実験によって調査する。
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