研究課題
重症心肺不全症に対する治療法として用いられる人工心臓や人工肺内の血液情報(流速、ヘモグロビン濃度、血栓)のイメージングを達成することで、人工臓器システムが患者の容態情報から、デバイスの仕事量、システム異常を認識でき、安全な治療を実現する「インテリジェント人工臓器」の開発をゴールとして研究を行ってきた。in vitro血栓試験およびブタを用いた体外補助循環大型動物実験における、動圧浮上遠心血液ポンプ内の血栓形成過程イメージング法の開発を行った。インペラが高速回転する遠心血液ポンプ内を撮影するため、ポンプ回転数と同周波数のキセノンパルス光源を照射し、ストロボ効果によりインペラの静止像を得た。ポンプ内血液による後方散乱光をハイパースペクトラルカメラにて撮影し、600~750nmの波長帯におけるスペクトル画像を得た。大型動物実験において、血液ポンプ内の吸光度変化領域が出現していく様子を撮影できた。この領域は実験後に確認したポンプ内血栓の形状と一致していた。血液凝固領域において吸光度からヘモグロビン濃度が低下していることがわかった。したがって光による血液凝固イメージングの基本原理は、フィブリン生成時に取り込まれる赤血球密度が周囲全血と異なることを利用することであることが明らかとなった。大型動物実験の結果、ポンプ内の血栓形成に一貫性が無かった。これは脱血カニューレ等の上流デバイスでできた血栓がポンプに飛来して付着し、それを起源に成長していたためであることが撮影された。この様にして人工臓器開発研究者の願望であった、高速でインペラが回転する遠心血液ポンプ内の血栓形成過程のイメージングに世界で初めて成功し、循環器デバイスの血液適合性は周囲デバイスの血液適合性と相互に関係するということを初めて視覚的に示すことができた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Artificial Organs
巻: - ページ: 1-8
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Artificial Organs
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https://unit.aist.go.jp/hri/group/2015_ao-4/index.html