膵臓のβ細胞数の維持には骨の骨芽細胞によるオステオカルシンの分泌が必須であることが報告されている。また妊娠期低栄養モデルにおける仔の骨形成不良も報告されており、骨芽細胞による膵臓β細胞の発生障害の可能性を検証することとした。当該年度は妊娠期低栄養モデル動物を作製し、既報の表現型を検証することでモデル動物の妥当性を評価し、新たに骨形成に着目し、血中オステオカルシンの定量などその表現型解析を遂行した。 まず妊娠期低栄養モデル動物を作製するため、日本クレアより購入し馴化したICR雌マウスを雄マウスと交配し、交配翌日プラグを確認した雌マウスを妊娠0.5日とした。妊娠0.5-13.5日はオリエンタル酵母社製飼料(MF)を自由給餌で、13.5-18.5日はオリエンタル酵母社製飼料(MFAIN-93M)をコントロール群の半分量を与え、18.5日以降はMFを自由給餌で与えた。飲水はいずれの期間も自由飲水で与えた。 得られた新生児の体重はコントロール群と比較し、約80%と低体重を呈し、膵臓のHE染色により膵島の縮小傾向が観察でき既報の表現型とも一致していたことから、妊娠期低栄養モデル動物を作製できたと判断した。 次に新生児での血中オステオカルシン量をELISAにより測定した結果、顕著に低く、体重と相関関係を示すことが明らかとなった。また大腿骨および頭蓋骨の大きさ(各長さ)は変化しないものの、重量は低下することが分かった。その他、膵臓および肝臓の重量は変化が見られず、脾臓の重量は低下傾向が観察された。さらにこれらの表現型は5週令では観察できなくなり、体重だけではなく、骨形成においてもキャッチアップされることが明らかとなった。
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