研究課題/領域番号 |
26870908
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石川 善恵 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (20509129)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液中レーザー溶融法 / 球状粒子 / サブマイクロメートルサイズ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、酸化チタン(アナタース)と炭酸バリウムや酸化バリウム、または炭酸マグネシウム粉体の混合分散液中でのレーザー照射によって粒子間で起こる反応の解明に取り組んだ。酸化チタンの単独分散液の場合、レーザー照射によってルチル構造を有するサブミクロン球状粒子が得られるのに対し、炭酸バリウム混合分散液中では同様なサブミクロン球状粒子が得られるが、レーザー照射フルーエンスや分散液濃度、酸化チタンと炭酸バリウム混合比といった条件を検討したところ、どの様な条件においてもそれらの粒子は、アモルファスであった。さらに、生成粒子の元素分析のために、照射後の回収粒子中の未反応炭酸バリウムの除去を目的とし、回収粒子を希塩酸にて処理したところ、炭酸バリウムに加え、生成した球状粒子も溶解することが観察された。このような溶解は、炭酸バリウムの混合比率が高い程、その傾向が顕著であることが明らかとなった。この様な結果より、炭酸バリウムの場合、生成物の化学組成が混合比によって依存する可能性が示唆された。 一方、酸化チタンと炭酸マグネシウムの混合分散液中で得られる球状粒子は、混合比率がMg: Ti= 1: 1であるにもかかわらずMgTi2O4であった。TiO2の光学吸収端が410 nmであるのに対し、MgTi2O4の吸収端は365 nm、MgTiO3は297 nmと、Mg組成比の増加に従い吸収端が短波長にシフトする。今回使用したレーザーの波長は355 nmであったことから、MgTi2O4よりMgの組成比が増加すると、光学吸収しないことで温度上昇が起こらないと考えられることから低Mg組成比であるMgTi2O4が生成物として得られたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標であった、複数種のチタン複合酸化物の合成について、バリウム、およびマグネシウムに関して取り組み、エネルギー密度や混合組成比といった条件が生成粒子の組成に及ぼす影響について等の予備的知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
詳細な複合酸化物合成プロセスを明らかにするために、平成26年度に得られた複合酸化物粒子断面の組成分布をナノレベルで分析する。また、酸化チタンと炭酸バリウムの混合分散液中で得られたアモルファス粒子の結晶化のために加熱処理、および遅延レーザーパルスの重畳による球状粒子の結晶化を試みる。加えて、イオンの状態の2族元素を原料とした場合の複合酸化物合成の可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中の研究により、炭酸バリウムの混合比による生成物の化学組成依存性の可能性が示唆され、さらに炭酸マグネシウムの場合、MgTi2O4の複合酸化物が生成することが明らかになった。そこで詳細な複合酸化物合成プロセスを明らかにするために、これらの粒子内組成分布をナノレベルで分析することが必要であり、その試料作製や分析に要する経費を平成27年度に計上する。 また、酸化チタンと炭酸バリウムや酸化バリウムの混合分散液中で得られた生成粒子がアモルファスであることが今年度中に明らかとなり、結晶化のためには加熱処理が必要となることから、そのための実験に必要な消耗品等の購入のための経費を平成27年度に計上する。
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次年度使用額の使用計画 |
レーザー照射によって得られた粒子を樹脂に包埋し、ミクロトーム等により薄片化、さらに電解研磨等の処理を施し、高分解能TEMに付属したEDSにて元素分布を調査する。 酸化チタンと炭酸バリウムの混合分散液中で得られたアモルファス粒子の結晶化のために加熱処理を行う。一般的な電気炉加熱では時間をかけて昇温し、なおかつ温度の低下においても徐々に冷却することになるため、結晶成長により安定結晶面が露出した多角形の結晶粒子が得られると考えられる。よって、レーザー照射により生成した球形を維持し、結晶性を有する粒子を得るためには、結晶成長による安定結晶面の露出をなるべく抑制するために、なるべく短時間で昇温、冷却を可能とする熱処理方法で加熱することが必要となる。そこで平成27年度はイメージング炉を用いて粒子を加熱することにより、球形の状態での粒子の結晶化を試みる。
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