酸化チタンと炭酸マグネシウムの混合分散液に対するレーザー照射によって、チタン酸マグネシウム化合物球状粒子が得られることを確認していた。この系では、波長355nmのレーザー照射中に酸化チタンが溶融するのに対し、炭酸マグネシウムは固体のままである。そこで本年度は、混合分散液へのレーザー照射によって得られる複合材料球状粒子のメカニズムをより理解することを目的とし、材料は当初の目的とは異なるが、照射するレーザー波長に対していずれも光学吸収を有する材料の組み合わせによる複合球状粒子の生成を試みた。原料にヘマタイトとB4Cのエタノール混合分散液に、532nmのレーザー光を照射した。照射後の磁気回収物の化学組成はレーザー光のエネルギー密度に依存しており、75、100 mJ cm-2 pulse-1ではマグヘマイトやγ-FeOOHが得られたのに対し、150 mJ cm-2 pulse-1以上では新たにFeBの生成が確認出来た。磁気回収粒子のXRD分析によって、FeBの生成比率は、レーザーのエネルギー密度の上昇にしたがって増加した。各レーザー光のエネルギー密度において、粒子が吸収したエネルギーから見積もられる到達温度より、150 mJ cm-2 pulse-1未満のレーザー照射では、原料であるヘマタイトは溶融しているのに対してB4Cは固体であり、一方で150 mJ cm-2 pulse-1以上のレーザー照射では、ヘマタイトとB4Cの両方が溶融していると考えられた。これらの結果より、マグヘマイトとB4Cの系において混合原料粒子の複合球状粒子を得るためには、両方の原料粒子が溶融している必要があることが明らかとなった。
|