研究課題
2015年度は、本研究課題の目的である「ヒト3D知覚に関わる脳内処理機構」を明らかにするためのfMRI実験を行い、論文発表を行った。特に下記3つの成果を上げた。これらの研究はイギリス・ケンブリッジ大学およびイギリス・UCLと共同で行われたものである。1.ローカルな両眼視差情報がどのようにグローバルな物体表面へと変換されるのか、その過程を調べたfMRIおよびニューラルシミュレーションによる実験結果を2014年度から国際誌投稿していたが、その論文内で用いたデータの追加解析を行い、Journal of Neuroscience誌へアクセプトされた。2.子どもは、11歳頃になるまで、複数の3D手掛かり(例えば、両眼視差と運動視差)を大人のようには統合することができないことが知られていた。手掛かりが統合できないのは、視覚経験が足りず統合された情報を引き出せないためなのか、それとも脳が未発達のためにそもそも統合ができていないのか、2つの仮説の間で決着がついていなかった。我々は、fMRI計測と多変量データ解析手法を組み合わせることで、後者の仮説が正しいこと、すなわち11歳頃に脳の視覚野V3Bに変化が起き、その後手掛かりが統合できるようになることを突き止めた。成果はCurrent Biologyに掲載され、同誌のDispatch(研究紹介)コーナーにおいて、2度その意義がハイライト紹介された。3.ヒトは3D手がかりを用いて物体表面の光沢感を知覚することができる。その知覚に関わる脳内処理機構をfMRI実験を通して明らかにした。成果はJournal of Neurophysiologyに掲載予定である。これらの研究を通して、初期視覚野V1から中・高次の領野V3A・V3Bへと至る3D視知覚情報処理の経路と各視覚野が担当する情報処理の内容を明らかにすることができた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 7件、 招待講演 7件) 図書 (1件)
Journal of Neurophysiology
巻: 117 ページ: 未定
10.1152/jn.00829.2015
Current Biology
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