研究課題/領域番号 |
26870912
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
溝口 一生 一般財団法人電力中央研究所, その他部局等, その他 (50435583)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 断層 / 地震 / 動的滑り伝播 / 微小割れ目 / 不均質媒体 / 岩石 / 実験 |
研究実績の概要 |
断層周辺の岩石に発達する割れ目の性状から,「地震時に断層のどこから滑りが開始して,その後どの方向へ伝播したか,どこが震源か」について推定できる可能性が理論研究により提唱されてきた.しかし岩石を用いた実験や自然地震に関する現地調査による検証はほとんどなされていない.本研究では,室内において断層の地震性動的滑りを再現した実験を行い,理論から推定された割れ目性状と破壊伝播方向の関係を実験的に検証する.得られた結果により,地震動予測において任意に設定される震源位置を割れ目解析から特定できれば,予測の精度向上に貢献できる. 平成26年度は断層動的滑り伝播実験を実施するため,まずは実験システムのセットアップを行った.実験は,1 軸圧縮プレスを用いて,断層を模擬した斜めの切れ込みを入れた岩板試料(斑レイ岩)(高さ400mm幅300mm 厚さ10mm)を鉛直載荷して行った.面内剪断変形が卓越するように,変位方向と直交する試料厚さを薄くしている.載荷は,断層沿いにせん断滑りが自発的に発生する直前で止めて,試料サイドから衝撃を加えることで,断層端からせん断滑りを開始させることを目指し,上記の斜めに切れ込みの角度を20,25と30度の3パターンを試しており,自発的な滑り進展に適切な角度の絞り込みに取り組んでいる.現在のところ22から24までの角度の場合に実験が成功する傾向が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は,既往研究で予測されている割れ目方位と伝播方向の関係が,不均質材料である岩石においても成立するか明らかにするため,(1)実験システムのセットアップ,(2)滑り伝播のコントロール,(3)滑り伝播実施後の岩石試料の割れ目解析を計画していた.このうち,(1)及び(2)までに達成できたものの,(3)の試料解析までに実施するこができなかった.この原因としては,自然地震の発生条件に近い断層の応力臨界状態の再現するための模擬断層試料の斜めの切れ込み角度の選定について,当初の想定以上に時間がかかったためである. 以上記したように,計画していた項目のうち,一つの項目が翌年度に持越しになったことから,全体としては「やや遅れている」と評価する.ただし本研究の最も重要且つ困難だと予想された滑り伝播実験には成功しており,来年度に試料解析を素早く実施することで,研究進捗の遅れは十分挽回できると思われる
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,実験により滑り伝播方向が既知の岩石試料を再現し,滑り伝播方向と,岩石内部でき形成される微小割れ目の方位の関係性を明らかにする.また岩種を変えた実験も実施する.さらに試料に不均一な応力を載荷するために,前年度セットアップした装置の鉛直載荷用ピストンを1個から3個へ増強し,試料の不均質性に加えて,断層のかかる応力が不均一な場合についても,滑り伝播方向と割れ目方位の関係を調べる.最後に実験結果を総括し,物質と応力の不均質性を考慮した割れ目形成モデルを新しく提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施予定であった実験後の岩石試料の割れ目解析用の薄片作成を見送ったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通りに1軸プレス装置への載荷ピストンの2本の増設に重点的に予算を配分しつつ,残りの予算及びH26年度からの繰り越し予算を,実験試料の割れ目解析用の薄片作成,研究成果の学会発表の旅費,センサー等の実験消耗品に充てる予定である.
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