本研究では海洋鉄循環モデルに考慮されていないコロイド粒子による鉄の吸着・除去過程をモデリングすることを目的として研究を実施した.コロイド粒子は生物活動が活発な海洋の上層でより多く存在すると考えられるため,コロイド粒子による鉄の吸着・除去を考慮することで,上層でより多くの鉄が除去されて下層に輸送されることが予想される.現状の海洋鉄循環モデルは表層に高濃度のバイアスがあるため,この過程をモデルに考慮することでバイアスを低減することが期待される. 平成26年度はコロイド粒子が凝集・沈降する過程の計算手法に関して文献調査を行い,粒子をサイズ毎にビンに分けて力学的にビン間の遷移を計算する手法を採用することを決定し,0次元のコロイド粒子凝集モデルを構築した.平成27年度はモデルを鉛直一次元に拡張し,上層と下層のコロイド粒子の分布の違いを表現出来るようにした.また,3次元の鉄循環モデルのパラメータの感度実験を行って,モデルのバイアスが改善する方法について検討した.平成28年度は粒子が沈降する過程で分解する過程を考慮して,粒子のサイズスペクトルをより現実的な分布にするよう改良を加えた.さらに鉛直一次元モデルで推定された粒子の分布から3次元モデルのパラメータを決定し,モデルの結果が改善することを確認した. 今後,鉛直一次元モデルで推定されたコロイド粒子の鉛直分布と現場観測データを比較して,開発した鉄の除去のパラメタリゼーションの妥当性を検討する.
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