我が国日本では2型糖尿病の罹患率が重大な社会問題となっており、その発症メカニズムの解明や有効な疾患治療法の新規開発が急務となっている。故に本研究では、加齢に伴う脂肪組織における老化細胞の増加がインスリン抵抗性に与える影響を検討し、加齢に伴い一旦低下したインスリン感受性が老化細胞の除去により可逆的に回復可能であるかを調べ、老化細胞が2型糖尿病治療薬開発の有効な標的と成り得るかを検証することを目的とした。 我々はまずインビボイメージングシステムにより、生きたまま生体内の老化細胞を検出可能であり、かつジフテリアトキシン投与により生体組織内から老化細胞を特異的に除去可能なトランスジェニックマウスの樹立を行った。初年度は、マウスコロニーの拡大とインビボイメージングシステムによる生体内での細胞老化の動態解析を行い、老齢マウスの肺と脂肪組織で老化細胞が出現することを明らかとし、加えて老齢モデルマウスにジフテリアトキシンを投与する実験を行い、加齢に伴い出現した脂肪組織の老化細胞は完全に除去することが困難であり、部分的にしか除去できないことを明らかとした。また老化細胞除去によるインスリン抵抗性の緩和を示唆するデータを得ることにも成功した。よって本年度は、平成26年度の解析結果をさらに発展させ、老齢モデルマウスをPBS投与群とDT投与群の二群に分けて実験検討を行い、脂肪組織における老化細胞が僅かではあるが有意に減少していることを示唆する結果を得ることに成功し、加えてインスリン抵抗性などをはじめとする糖代謝能に改善がみられることを明らかとした。糖代謝機能に関する解析以外は未だ不十分であるが、本研究の解析結果は、脂肪組織の老化細胞除去により可逆的に糖代謝能が回復可能であるという興味深い結果であると思われる。
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