研究実績の概要 |
研究者の所属する研究室のこれまでの検討で、ヒト流早産起因細菌ウレアプラズマの外膜リポタンパク質MBA、及びMBA由来のリポペプチドUPM-1は妊娠マウスにおいて、子宮内胎児死亡や、早産を引き起こすことを報告した(Uchida K, J Repord Immunol, 2013)。また、ウレアプラズマはクラスリン依存的に宿主細胞内に容易に侵入し、宿主細胞内でオートファジー経路を逸脱し、少なくとも14日間宿主細胞内で生存し、その後再度細胞外に出たのち、他の宿主細胞に再感染することが分かった(Nishiumi F, MicrobiologyOpen, 2017)。しかしながら、ウレアプラズマがいかにして宿主細胞内でその分解経路から逃れ、生存しているのかについては、そのメカニズムは不明である。そこで、本プロジェクトでは、酵母発現系を用いた宿主細胞膜障害性のあるウレアプラズマ由来遺伝子をスクリーニングし、これまでに報告の無い新規のUreacytotoxin(Ucx) 遺伝子を得た。昨年度の報告で述べたように、Ucxタンパク質を発現させた大腸菌は、その成育が障害される。本年度は、当初の目標である宿主細胞の障害性に関して検討を行った。その結果、宿主細胞内でUcxを強制発現させると、宿主細胞は障害を受け、細胞死に至ることが分かった。次にUcx-GFP発現ベクターを作製し、宿主細胞内で発現させ、その局在を観察した。その結果、宿主細胞内に空胞を形成し、その空胞の膜にGFPが局在することが示された。酵母発現系でのスクリーニング結果と一致し、ヒト細胞においても宿主細胞膜を障害していることが示唆された。そこで、現在は論文の作成に向けて詳細なデータの解析を行っている。
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