研究課題/領域番号 |
26870925
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研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
池田 忠広 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員 (50508455)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カエル化石 / トカゲ化石 / 記載・分類 |
研究実績の概要 |
本研究では、兵庫県下部白亜系篠山層群産のカエル類およびトカゲ類化石についてその分類学的帰属を明らかにすることを主目的としており、本年度は分類形質情報の整理、また手取層群より産出している同分類群の化石標本と比較し、その類似性や相関性について検討した。 本研究で検討するカエル類化石は全身の要素を留めた骨格化石2標本であり、自身の先行研究また本研究における形質観察の結果から、それぞれが異なる分類群に帰属すると考えられる。これらの標本と、下部白亜系手取層群より報告されているカエル類化石(腸骨・椎骨・脛腓骨)と比較検討したところ、腸骨・椎骨の形態に明瞭な差異が認められることから、篠山産と手取産のカエル類化石は、異なる分類群に帰属すると考えられる。これらの結果から、日本における下部白亜系のカエル類相は少なくとも三つの異なる分類群(篠山2・手取1)により構成されることが示唆される。 トカゲ類化石については上顎骨3、歯骨7、計10標本について検討をおこなった。顕微鏡目視下による形態観察やSEM等を用いた微細構造の観察により、上顎骨の3標本はそれぞれ異なる分類群とされ、内一つは昨年度新種Pachygenys adachii sp. nov(本研究申請時査読中)として記載報告されたものと同属と考えられる。また歯骨化石の内、先行研究で指摘されているScincomorphaとされるものに加え、新たにPachygenys属の未記載種とされる標本(P. adachiiと異なる)が確認されている。そして、これらの標本と手取層群産トカゲ類化石を比較検討したところ、歯形状などにおいて明瞭な差異が認められた。したがって、篠山産トカゲ類は手取産とは分類群が異なり、また少なくとも8タイプ(Scincomorpha 4タイプ、Pachygenys 2タイプ、詳細不明 2タイプ)のトカゲ類から構成される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、兵庫県下部白亜系篠山層群産のカエル類およびトカゲ類化石についてその分類学的帰属を明らかにすることを主目的としており、初年度では本検討資料の分類形質情報の整理、また国内標本との形質比較を予定していた。 分類形質情報の整理においては、化石の剖出作業が進展することで、当初CT撮影で観察する予定だった形質も目視により確認することが可能となっており、またSEM等の機器を用いることにより微細構造をより詳細に認識することでより多くの分類形質情報が得られている。従って、形質情報の整理についは予定どおりの成果が得られていると考える。 国内標本との比較においては、関係機関との調整や機器の選定の関係から、CT・SEMでの観察が十分に行えていないが(目下調整中で近々にデータが得られる予定)、顕微鏡観察下や文献情報から得られる比較資料の形質情報と本研究で整理した化石資料の形質情報をもとに概ね比較が可能となっており、分類学的位置を検討する上で有益なデータが得られている。従って、国内標本の比較においても予定どおりの成果が得られていると考える。追加情報を得るため、次年度も引き続き国内標本との比較検討を続ける。 また、カエル類化石については国内標本に加え、文献情報を基に国外標本との比較が概ね完了しており、現在記載論文を執筆している最中である。次年度には、各研究機関を赴き改めて国外標本の形質情報を確認する予定であるが、カエル類化石の研究においては予定より進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では検討化石資料の分類形質情報の整理・国内化石標本との比較を行い、研究計画に沿った成果が得られている。次年度では、国外学術施設(中国、イギリス)等に赴き、各比較検討資料の形質情報の収集に努める。これら国外標本について、可能な限りCTやSEM等で詳細な形質情報を得たいと考えているが、各施設の機器整備状況等を考慮すると十分なデータを得ることはやや困難であることが予想される。したがって、観察機器等を持参し、可能な限り現地で目視下にて十分な形質データを得ることが出来るよう努める。
課題・変更点:①本研究申請時は化石標本のCT撮影を積極的に行い、Amira5.4.5を用いて3Dモデル化し目視出来ない形質を確認する予定であったが、交付金額に応じてより安価で同様の作業が行えるソフトウェア(ImageJ(フリー)やVolume Extractor(試用版))等を用いて処理を試みている。これらのソフトウェアで思うような成果が得られない場合は、Amiraを有している施設・個人に借用し処理を行う。また、化石の剖出処理を進めることで可能な限り目視で形質情報を得ることに努めている。②カエル類・トカゲ類ともに多くの現生種が生息し、化石種も含めたこられの上位分類群の区分・標徴が幾つかの先行研究で示されているが、形質記載や図示が必ずしも十分といえない。したがって、可能な限り現生種の骨学情報を収集し、既知の分類表徴を評価したうえで、本検討化石標本の系統学的位置、上位分類群の帰属について検討を行う必要があると考える
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次年度使用額が生じた理由 |
国内化石比較標本を借用しCT撮影を行い形質情報の収集を行う予定であったが、現在関係機関と借用交渉でありこれらの作業が予定通り行えていない(6月撮影予定)。また、本研究申請時には、Amira5.4.5を購入しCTデータより3Dモデルの構築を目指していたが、交付金額に応じてより安価でAmira同様の作業が行えるソフトウェアを改めて選定する必要があった。現在、ImageJ(フリー)やVolume Extractor(試用版)等を使用し処理を行っているが、思うような成果が得られずソフトウェアの購入には至っていない。
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次年度使用額の使用計画 |
現在借用交渉を行っている標本があり、これらのCTデータ撮影費として使用する予定である。また、3Dデータ構築用のソフトウェアを選定中であり、納得のいく成果が得られるソフトウェアが見つかり次第購入する予定である。ソフトウェアを購入せず、他の研究施設・個人に協力・借用を依頼しデータの構築を行う場合は、同物品の替わりとして実態顕微鏡(Nikon SMZ1000等)や顕微鏡写真撮影装置等を購入する。また、「今後の研究の推進方法」においても記述したが、現生種の骨学的データを得る必要があり、それらのデータを得るための旅費としても使用する予定である。
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