研究課題/領域番号 |
26870926
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研究機関 | 公益財団法人先端医療振興財団 |
研究代表者 |
小林 加奈子 公益財団法人先端医療振興財団, 医薬品研究開発部, 研究員 (10724106)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | β-Klotho / 子宮内胎児発育遅延 / 卵黄嚢 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
子宮内発育遅延(IUGR)は出生後の肥満や生活習慣病のリスクを高めることが報告されているが、発症メカニズムには不明な点が多い。本研究は、胎児期の発育を制御するメカニズムを解明し、IUGRの予防策を立案することを目的とする。 β-klothoノックアウトマウス(KO)は出生時から体重抑制を示すが、メカニズムは明らかではない。申請者は、β-Klothoが胎生期において卵黄嚢に発現していることに着目した。胎盤が形成される胎齢10日前後までは卵黄嚢が胎仔(胚)への栄養供給を担うことから、卵黄嚢に発現するβ-Klothoが胚の発育に関わることが考えられる。H26年度は、β-Klothoの欠損が胚の発育に及ぼす影響について、形態学的解析を中心に検討した。
1.胎齢9.5日において、KO胚に形態学的な異常は認められなかった。しかし、KO胚はコントロールである同腹のヘテロマウス(HE)の胚よりも小さく、発育抑制が胎盤形成以前に生じていることが示唆された。KOの卵黄嚢に明らかな形態異常は観察されなかったが、DNAメチル化レベルがHEより低い傾向を認めた。
2.リアルタイムPCRによりβ-klotho mRNAが胎齢7.5日から発現していることを確認した。また、β-klotho mRNA発現は胚よりも卵黄嚢で高かった。抗β-Klotho抗体を用いた免疫染色による胚および卵黄嚢における局在の同定を試みたが、十分なシグナルを得られなかった。条件検討を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は胚および卵黄嚢の形態学的解析を行い、胎盤形成前からKO胚の発育抑制が生じていることを明らかにした。また、β-Klotho欠損によって卵黄嚢のDNAメチル化が低下することを見出した。β-Klothoの局在の同定には至っていないが、おおむね当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度はβ-Klotho欠損が卵黄嚢の機能に与える影響を検討する。
1.KOでは卵黄嚢のDNAメチル化レベルが低下していたことから、遺伝子発現プロファイルが変化している可能性が高い。トランスクリプトーム解析を行い、卵黄嚢におけるβ-Klothoの標的遺伝子を同定する。標的遺伝子を同定することで、胚の発育を制御しうる代謝経路やシグナル伝達経路を明らかにできると考える。当初、培養細胞および全胚培養法を用いたβ-Klotho依存的な栄養素と代謝経路の探索を計画していたが、トランスクリプトーム解析の方がより広範な情報を得られることから、こちらを優先して実施する。
2.出生後のKOは低脂血症を呈するが、胎生期においてもβ-Klothoが脂質代謝に関わる可能性を示唆するデータが得られている。母マウスに低脂肪餌・高脂肪餌を与え、胚の発育やDNAメチル化、遺伝子発現の解析を行う。胚の発育に変化があれば、出生後の体重制御への影響を明らかにするため、出生後の体重を測定する。
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