研究課題
子宮内胎児発育遅延(IUGR)は、成人後の肥満や糖尿病などのリスクを高めることが明らかになっているが、発症メカニズムには不明な点が多い。本研究では、胎生期の発育制御に関わる分子メカニズムの解明を試みた。β-klothoノックアウトマウスの胎児(胚)は発育抑制を示し、出生後の体重も少ない。胎生期において、β-Klothoは卵黄嚢に発現を認める。卵黄嚢は、胎盤が完成するまで母体から胚への栄養供給を担う器官であることから、卵黄嚢に発現するβ-Klothoが胚への栄養供給に必要である、との仮説に基づき、以下の解析を行った。(1)卵黄嚢におけるβ-klotho発現細胞の同定:卵黄嚢は、内胚葉細胞、中胚葉細胞、および内皮細胞によって構成され、母体から供給される栄養は内胚葉細胞を介して吸収・代謝される。野生型胚より採取した卵黄嚢を内胚葉細胞と中胚葉細胞/内皮細胞の2つに分離し、RT-PCR法でβ-klotho発現を検討したところ、β-klothoは主に内胚葉細胞に発現していることが明らかになった。(2)卵黄嚢の網羅的遺伝子発現解析:RNAシーケンス法によって、卵黄嚢においてβ-klotho依存的な発現変動を示す遺伝子を同定した。これらの中には、栄養素の代謝酵素やトランスポーターをコードする遺伝子が複数含まれていた。以上の結果から、卵黄嚢の内胚葉細胞に発現するβ-Klothoが、栄養代謝・輸送関連遺伝子の発現調節を介して、胚への栄養供給を制御している可能性が示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
The FASEB Journal
巻: 30 ページ: 849-862
10.1096/fj.15-274449