研究課題/領域番号 |
26870931
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研究機関 | 特定非営利活動法人ヘルスサービスR&Dセンター |
研究代表者 |
酒井 未知 特定非営利活動法人ヘルスサービスR&Dセンター, その他部局等, その他 (10604697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地理情報システム / アクセス / 需給バランス / 救急医療 |
研究実績の概要 |
1)緊急度の高い治療を要す患者需要と救命救急センター(センター)から配分される医療供給量のバランスの検証 地理情報システム(GIS)を用いて、全国の1km四方の区画(メッシュ)内の需給バランスを定量化した。緊急度の高い救急患者の年間需要は、消防庁緊急度判定実証検証事業の搬送記録と国勢調査人口で推定した。需給バランス指標として(1)都道府県別の、覚知~60分以内にセンターにアクセス可能なメッシュ内(カバー圏内)の患者割合を算出した。さらに、カバー圏内の需給バランスとして(2)各センターから患者1人あたりに配分される供給量=1/各センターのカバー圏内患者数、を推定した。推計の結果、全国で年間約40,000人の患者がカバー圏外で発生すること、カバー圏内患者割合、カバー圏内の患者1人あたりに配分される供給量の何れにも地域差があることを明らかにした。 2)救急医療機関の適正配置を検討する手法の開発 2004~2014年にPubmedに掲載された論文をレビューし、先行研究の手法を救急医療に適用する課題を抽出した。 適正配置を検討する手法には(1)公平なアクセスの確保を目的とするモデル(2)アクセスのコストを最小化し、効率的な資源配分を目的とするモデル(3)公平性と効率性の両者の改善を目的とするモデルに大別された。救急医療に適用する最大の課題は、地域特性や患者の病態に応じた、医療供給可能圏域の設定と考えられた。 本研究の意義は(1)センターは毎年増設されているが、未だ適時間内のアクセスが確保されていない地域があることを明らかにしたこと、(2)多くの先行研究で検討されたアクセス時間の地域差に加え、適時間内に医療機関にアクセス可能な地域内の需給バランスを定量化したことにある。今後、今年度分析結果の妥当性検証、先行研究レビュー等を進め、GISを用いて救急医療資源の適正配置を検討する手法を考案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)緊急度の高い治療を要す患者需要と救命救急センター(センター)から配分される医療供給量のバランスの検証は、平成26年時点の横断的検証を完了し、ピアレビュー誌への投稿論文を執筆した。さらに、東北地方を対象に、救急車に加えてドクターカーで覚知からセンターまで45分以内の患者数に基づく、夜間の需給バランスの試算も完了し、平成27年6月の米国疫学会(Society for Epidemiologic Research)で発表を予定している。研究計画で平成26年度内の完了を予定していた、全国における夜間の需給バランス評価は、平成27年度に行う。
2)救急医療機関の適正配置を検討する手法の開発は、アクセスの概念、需給バランス、適正配置の検討手法に関する代表論文のレビューを完了したが、Pubmed以外のデータベース(Medline、Embase、Web Of Science)の論文のレビューは完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
1)緊急度の高い治療を要す患者需要と救命救急センター(センター)から配分される医療供給量のバランスの検証は、需給バランスの推定手法に関する先行研究のレビュー等を踏まえ、必要に応じて需給バランスの指標を再定義し、平成17~27年の経年変化を検証する。
2)救急医療機関の適正配置を検討する手法の開発は、引き続き、Pubmed、Medline、Embase、Web Of Scienceの論文のレビューを進め、センター、ドクターカー拠点の適正配置を検討する手法を開発する。
なお、研究計画では、重症外傷患者についても、需給バランスの推定を予定していた。しかし、研究計画時以降、重症外傷診療を専門とし24時間体制で受入れる外傷センターの整備が進み、救命救急センターのみが治療を担当すると仮定することが適切ではないため、非外傷の緊急度の高い患者全体を対象にした需給バランスを検討することに変更した。 さらに、GISによる救急搬送時間の推定値と、本邦の特定地域における救急搬送時間の実測値を比較し、推定結果の妥当性を検証することを予定していた。しかし、総務省消防庁の最新の報告(平成26年救急・救助の現況)から、救急搬送時間の都道府県格差が解消されておらず、特定地域のデータを用いることが適切ではないと判断されたため、感受性分析の手法は改めて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)緊急度の高い治療を要す患者需要と救命救急センターから配分される医療供給量のバランスの検証、の報告のため、学会出張(旅費の使用)を予定したが、発表は次年度に行う。 また、全国を対象に、救急車に加え、ドクターカーによる搬送可能患者数を加味し、夜間の需給バランスを推定するため、 地理データ計算プログラム作成、データベースの作成費用(その他費用の使用)を予定した。平成26年は、東北地方を対象にした試算まで完了したが、全国の評価は次年度に行う。 2)救急医療機関の適正配置を検討する手法の開発のため、文献データベース利用、取寄せ(その他費用の使用)、文献整理(人件費謝金の使用)を予定していた。しかし、文献整理はソフトウェアを用いて行ったため、人件費が発生しなかった。また、文献レビューの進捗が遅れたため、上記のその他費用は次年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
1)緊急度の高い治療を要す患者需要と救命救急センターから配分される医療供給量のバランスの検証、のため、地理データ計算プログラム作成、地理情報分析用ソフトウェアの購入、英文論文校閲費用(その他費用)、学会発表費用(旅費・その他費用)を使用する。
2)救急医療機関の適正配置を検討する手法の開発のため、文献データベース利用料、論文・書籍購入、地理データ計算プログラム作成、英文論文校閲費用(その他費用)を使用する。
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