研究課題/領域番号 |
26870933
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
雨宮 薫 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 特別研究員(PD) (80638536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動意思決定 / 難易度 |
研究実績の概要 |
本研究では、課題の難易度によらない運動の意思決定に特徴的な脳活動パターンの同定を目的としている。使用する手の選択を伴う課題を行う場合、使用する手の選択は通常、後続する課題内容や位置以外にも、課題の難易度にも影響を受ける。簡易な課題では、非利き手の選択も容易に可能である一方、複雑さや正確さが要求される場面では利き手の利用がおのずと促進される。仮に、後続する課題の難易度に依存しない使用手そのものに特徴的なパターン抽出が可能となれば、非利き手の選択に特徴的なパターンを利用し、強化学習の手法で非利き手の選択を促進することも可能となると考えられる。 もぐらたたきの要領で、提示されるターゲットに対して左右のどちらかの手で到達する運動を被験者に課し、課題実行中の脳波を計測した。その上で簡易に使用手選択が可能な条件と使用手選択に悩む条件の両条件間で、共通する特徴・相違する特徴の抽出を試みた。ターゲットが提示された後は、運動準備に入っていることもあり、運動準備電位を利用した左右手の判別が可能であるが、一方の手の利用促進を今後行うことを考慮に入れ、運動準備に入る前の脳活動を利用して共通の脳活動を抽出することを試みた。ターゲット提示前の脳活動をそのまま判別に用いると全周波数帯域にいおいて判別成績の乱高下が強く、課題が簡易でなくなるほど成績の乱高下が強くなる傾向が見受けられた。このことを利用し、自発的に活動する脳活動の変動を因子として利用し判別を行うと、αからβ帯の周波数領域において、ターゲット提示に近づくほど判別成績が上昇する傾向が、課題によらず共通して観測された。さらに、判別成績の上下が相関する様子が見られた。そこで同様の特徴を利用して課題提示後の到達運動の速さを判別した場合、課題の如何によらず判別成績に差が生じなかった。課題に先行して運動意思決定に影響する脳活動が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験により、運動における意思決定場面が条件によって変化しうること、さらには条件間に共通する特徴量が存在する可能性を示唆することができた。 今後は、更に応用し、複雑な運動課題を利用し、同様の判別を検討する。 しかし、運動の意思決定においては脳活動だけではなく、行動そのものに個人差が多く存在する。判別結果も個人差が多いが、そうした脳活動の個人差が行動の個人差とどのように結びついているかを検討することも同様に必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
行動の違いを生み出す個人の運動の意思決定を検討するためには、そもそもの左右手の運動や運動感覚、運動シミュレーション場面において左右手の活動がどのように個人間で共通・相違するかを検討する必要があると考えられる。 個人ごとの運動処理の差が、運動意思の行動差に影響している場合、運動の意思決定場面における個人差にも影響していると考えられる。それは左右の手の選択にも影響を与え、特に課題に誘発される前の個人の脳活動の揺らぎに影響を与えていると考えられる。そこで、次年度以降は、運動の意思決定の課題の難易度を、個人差および個人ごとの難易度の差から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品が研究機関で新たに利用可能となったため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、新たに追加する解析手法に必要な機器の導入に利用する。
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