研究課題
平成29年度は前年度に行った,preplay類似現象(プロトタイプ的神経表現)が知識獲得に関与するという仮説実証に関するヒトMRI実験を引き続き行い,その結果を解析し,論文を執筆・出版した.実験は前半文と後半文からなる文の理解に関わるものであった.これらの文は単独では理解が難しいが,合わさると理解可能になる文であり,実験では一日目に前半文を与え,翌日に後半文を与えた.解析の結果,後半文提示前に撮った事前安静時fMRI中に,後半文の神経表現に似たプロトタイプ的神経表現が多く含まれているほど,その後の後半文の理解が促進されることがわかった.またこの効果は,ペアとなる前半文が存在する後半文に限って見られた.ここからプロトタイプ的神経表現が知識獲得の選択性に関与すること,またその効果は事前知識依存的であることが示された.これらの結果をまとめて論文を執筆し,投稿および出版を行った.さらに前年度,選択的知識獲得が被験者の創造的生産性を効率的に増進するように行われているという仮説のもとに行った実験についても,データを解析し,論文の執筆,投稿を行った.これは,既知語をランダムに組み合わせて作った新規合成語を用いた実験であった.課題では,まず被験者にそれらの合成語を提示し,ワーキングメモリ課題を挟んで合成語の再認記憶を測るテスト,最後に合成語をテーマにした論述文を書かせる課題を行った.解析結果から,被験者は創造的生産性を増進するように効率的に選択して知識獲得を行っていることが示された.またシナプス可塑性ルールを入れたニューラルネットシミュレーションから,知識が新規にニューラルネットに取り込まれるとき,それがネットワーク全体にアクセスしやすい位置に割り当てられるほど,その獲得強度が強くなることを示し,これが実験結果の可能なメカニズムであると考えられる.これらの結果をまとめ,論文投稿を行った.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Frontiers in Human Neuroscience
巻: 12 ページ: 111(1)-111(19)
10.3389/fnhum.2018.00111