有線と無線が混在する通信環境においても利用可能な低負荷・高精度ネットワーク品質計測技術を確立するため,低負荷かつ高精度に計測する技術を複数の異なるアプローチに基づき開発した.ネットワークのエンドツーエンドの通信品質を計測するアクティブ計測は,計測に際して試験パケットを送出するため,多数の試験パケットを送出すると試験パケットの負荷による通信品質の劣化が発生してしまう.この品質劣化は帯域制約の厳しい無線通信において顕著に現れることが予想されるが,無線の通信品質に試験パケット負荷が与える影響は評価されていなかった.本研究では,ルータを待ち行列モデルによりモデル化することにより,試験パケットがネットワーク品質の計測精度に与える影響をモデル化し,従来のアクティブ計測による計測では,計測精度に構造的な限界が存在することを示した.また,上記のモデルにより示された計測精度の限界を打ち破るために,低負荷かつ高精度計測を実現する以下の5つの技術を開発した.1) 遅延のバースト性を利用したプローブ送出の動的制御手法.2) 周期的変動を伴うネットワーク遅延の圧縮センシングを利用したアクティブ計測.3) 複数フローのアクティブ計測によるバースト遅延時系列の推定.4) 無線通信環境におけるアクティブ計測のバイアスを補正するアクセス遅延推定法.5) 試験パケット負荷によるパス品質劣化を考慮した高精度遅延計測.これらの技術により,従来のアクティブ計測における計測精度の限界を越え,高精度なネットワーク品質計測が実現できることをシミュレーションおよび実験により確認した.
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