車両間通信技術の多くは無線LANを通信手段として利用するため、隠れ端末による混信問題や、対向車両間の通信スループットが極端に低い問題を抱えている。本応募課題で複数チャネルを用いた配信プロトコルを提案する。目標は(1)混信軽減、(2)対向車両間通信、(3)通信スループット向上、(4)送信権公平性保証、の四点とする。 IEEE 802.11gは干渉しない3または4つのチャネルが利用可能であるため、単一チャネルのみを利用する場合と比べて混信の影響が軽減され、大容量の通信が期待できる。提案手法では、各交差点と交差点間をつなぐ道路を無線電波が到達可能な大きさの領域(セルと呼ぶ)に区切り、隣り合うセルとの電波干渉を考慮して各セルにチャネルを割り当てる。各車両はGPS により自身の正確な位置情報を取得して、自身が所属するセルを把握し、それぞれのセルに割り当てられたチャネルを利用することで、チャネル競合に伴う輻輳の発生を抑えることができる。また、データ通信はブロードキャストを用いて行うことで、コネクションが不要となり、車両の高速移動に対応可能である一方、セルは無線電波到達範囲に収まるサイズであるため、隠れ端末問題が発生しにくい。さらに、各車両には帯域へのアクセス待機時間に比例した優先度が設定されるため、車両数が変動した場合においても公平に送信権が得られる。 動画像広告用のビデオクリップを数種類生成し、車両ネットワークへ流布した場合の性能について評価した。提案手法は他の手法と比べて車両密度が高い混雑した状況下でも高いスループット能力を持つことを確認した。各車両が取得できたビデオクリップ数についても、提案手法は多くのビデオクリップを高い完成度で取得できていることを確認した。 関連する研究業績として、スタートアップ期間中に、ジャーナル論文2本、国際会議論文1本を上げた。
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