時空間高解像度データをネットワークにより表現し,そのネットワークの構造の時間発展を解析することで,元のデータに潜む時空間構造を明らかにするための解析手法開発が本研究の目的である.従って,ネットワークの時間発展規則をどのように効率的かつ効果的に捉えるのかが,非常に重要である. 当該年度では,ネットワークの時間発展規則を検出・同定する解析技法の開発を行った.具体的には,各時刻にネットワークの構造がどれだけ変化したのかを求めるため,二つのネットワーク間の距離を定義した.既にグラフ編集距離やハミング距離など,ネットワーク間の距離を与える方法が存在するが,頂点数や枝数のみに着目した従来手法では近年の複雑ネットワーク分野で培われた知見が全く考慮されていない.したがって,本研究では,複雑ネットワーク分野で培われた知見を導入した新たな距離を定義した. 具体的には,ネットワーク中の結合が密な頂点集団(クラスター)に着目し,二つのネットワーク間のクラスター構造の差異を距離計算に応用した.クラスターはネットワーク構造を特徴付ける上で非常に重要な概念であり,ネットワーク間の違いを表す効果的な距離となりうる.
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