| 研究実績の概要 |
本研究の目的は，高齢者・難聴者が様々な雑音が存在する実環境下で，コミュニケーションを取りやすくするための補聴器の開発である．雑音環境下で補聴器を使用するには，目的音声を強調するための雑音抑圧技術が有効であるが，環境によっては目的音声が歪みすぎるなどの問題がある．そこで本研究では，雑音抑圧後の音声信号の品質を高次統計量に基づき自動制御する手法を提案し，聞き取りやすい補聴器の開発に繋げる．
平成27年度は以下の項目にして研究を遂行した．
実環境下で音声の品質を評価できるように，雑音を含まない音声（クリーン音声）を用いない音声品質評価尺度の提案を目指している．先行研究において，キュムラントの加法性を利用して音声信号の特徴量を表す高次モーメントを推定する手法が提案されている．この手法は，キュムラントの加法性とモーメントの指数乗演算が可能という性質を利用して,音声と雑音が混合した信号(混合信号)と雑音信号から高次の音声モーメントを推定するというものである．しかし，この手法で得た音声モーメントの推定精度が良いといえるほどの実験は行われておらず，精度の確認が必要であった．そこで，上記の手法で得られる推定の音声モーメントの精度を確認するために，様々な環境における音声信号のパワースペクトルモーメントの推定精度を検証した．次に，入力信号が一般化ガウス分布に従う仮定を導入し，これを推定精度の向上のための改善案として述べ，実験によりその有効性を確認した．
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