研究課題/領域番号 |
26881002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
観山 恵理子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (00733643)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 地域農業 / 災害復興 / 社会関係資本 / 社会的ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,大規模な自然災害の被災地における中長期的な営農収益の向上と流通ネットワークならびに社会的ネットワークとの関係を明らかにすることである.この研究目的を達成するために,事例研究として1990年代初頭に発生した雲仙普賢岳噴火災害の被災地である島原市・南島原市と2011年に発生した東日本大震災の被災地である仙台市の被災農家や農地を研究対象とした.平成26年度には,産地形成の要因として既存研究で検討されてきた新技術の導入・組織化・農業政策などが大規模な自然災害の発生によってどのように変容し,地域農業の構造変化につながったのかを検討した.具体的には,2015年現在,災害発生から24年が経過している長崎県島原半島を中心として,現地の図書館や公的機関の資料室等にて災害に関する基礎的な資料を収集するとともに,関係者への聞き取り調査を行った. 島原半島の被災地では,災害復興事業を契機として新品目への転換が進み,地域農業の再興が実現された.災害をきっかけとして離農農家が増加したにもかかわらず,農地の区画整理や新品目の導入がスムーズに実施された理由として,農業復興と農地利用の効率化のために農業者,地方自治体,土地改良区など多様な主体を含む協議会が設置されたことや新品目について収益が見込める販路が確保されたことが挙げられる.島原の事例では,もとの居住地域に基づいた避難場所の設定が可能であったため,避難先においても隣近所の社会的ネットワークが維持され,復興事業に関する政府への陳情,協議会の設置,土地区画整備における換地の実施などといった際にこの社会的ネットワークが重要な役割を担っていたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農家への個別アンケート調査について,協力を依頼していた現地の機関で改組があったことと,農繁期を避けるために,計画よりも実施がやや遅れているが,調査先機関の協力により,その他のデータ収集や聞き取り調査について予定以上の進展があったため,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,農業の復興において重要な役割を果たした社会的ネットワークについて,より詳細に分析するために,本年度は捕捉しきれなかった離農世帯についても調査対象に含め,営農を続ける世帯との比較を行う.また,島原半島の事例研究で得られた知見をもとに,仙台市において東日本大震災が被災地の営農に及ぼした影響を長期的に研究する. 農地の転換についてアンケート調査等でデータ収集をすることが難しい場合には,既存の地図データやセンサスのデータを用いてより広範囲に,定量的に分析する.
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