研究課題/領域番号 |
26882001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石村 大輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00736225)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 三陸海岸 / 地殻変動 / 日本海溝 |
研究実績の概要 |
本年度は,三陸海岸全域での地形判読および現地調査を実施し,三陸海岸に沿って平坦面が断片的に見られるものの,その成因・年代については従来の研究を再検討する必要があることがわかった.三陸海岸北部(八戸ー久慈)では,既存研究と同様に最終間氷期に形成されたと考えられる海成段丘が分布し,風成層のテフラ分析を実施したところ洞爺テフラが段丘構成層の直上に見出され,段丘の形成年代の確実度が上がった.また北部の完新世の地形面上での掘削調査からは,予察的ではあるが完新世の異なる時代の平坦面がほぼ同じ高さにあることが推定され,複雑な地殻変動史を考慮する必要があることがわかった.三陸海岸の中部(久慈ー釜石)では,完新世低地での掘削の結果,陸成層中に狭在する十和田中せりテフラが海面下にあり,約6000年間での沈降傾向を示唆することがわかった.更新世段丘については,地形的特徴から河成段丘が多く分布する.宮古以北には最高位の平坦面が分布するが,形成年代は中期更新世ごろまで遡ると推定され,最終間氷期以降の地殻変動量に関してはその時代の海成段丘が分布しないため得ることができなかった.三陸海岸の南部(釜石ー鮎川)でも中部同様に沿岸部の更新世段丘の多くは河成段丘である可能性が高く,露頭調査でも海成である証拠は得られなかった.完新世の地形面上での掘削は,実施できておらず,不明な点が多いが、地形的特徴からは中部同様に沈降傾向であることが推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施すべき三陸海岸全域での地形判読および現地調査を完了することができた.掘削調査に関しては,用地交渉および並行して行った試料分析に時間がかかったため,三陸海岸南部では実施することができなかった.ただし,掘削を行った三陸海岸北・中部では予察的ではあるが更新世・完新世を通じた地殻変動の傾向をとらえることができた.そのため達成度は(2)おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前年度の結果を踏まえて、おもに三陸海岸の中・南部で掘削調査の追加と高密度な分析を実施し,ある期間の地殻変動量を明らかにする.更新世の段丘調査については,段丘面の分布・形態および段丘構成層に基づき海成段丘か河成段丘かを推定する.各地域内で複数の掘削試料を用いて段丘面を覆う風成層中の火山灰分析を行い段丘面の離水年代を推定する.そして,その標高からある期間での地殻変動量を推定する.完新世の地形・地質調査について,完新世低地では掘削調査を追加し地下地質の分布・連続性を把握し,変位基準となる地層を決定する.完新世段丘でも段丘面上での掘削調査を追加し,その形成年代および成因(海成・河成)を明らかにする.これらの変位基準をもとにある期間の地殻変動量を推定する.
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