本研究では,東北地方太平洋岸(三陸海岸)での長期間(最近数千年間から10万年間)の地殻変動を地形学・地質学的手法に基づき明らかにすることを目的とし,更新世段丘や沖積低地において地形・地質調査を実施した. その結果,三陸海岸北部では最近10万年間で0.1-0.2 mm/yrの隆起が認められた.一方,三陸海岸中南部では明らかな最終間氷期海成段丘は認められなかった.その地域で沖積低地の掘削を行った結果,現海面下に陸成堆積物が分布し,完新世における沈降が示唆された.これらは三陸海岸の南北で異なる地殻変動が進行している可能性を示しており,日本海溝での沈み込みや地震サイクルを考える上で重要な知見である.
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