先行研究を概観すると,片脚スクワットは前額面上における骨盤の挙上運動やそれを制御する筋群を特異的に強化可能なトレーニング手段となりうる可能性がある。このような骨盤の運動またはそれに関与する筋群は,片脚で行う様々なスポーツ競技においてその重要性が叫ばれている。したがって本研究では,前額面上からみた,骨盤の回転運動を引き出すための片脚スクワットを用いたトレーニング方法論の構築を試みた。具体的には,[1] 片脚スクワットにおいて動作開始時の姿勢(矢状面上から下腿部の角度)に着目し,姿勢の相違により生じる影響,[2] 片脚スクワットの踏込脚における台の有無やその高さの相違による影響について検討した。片脚スクワットを含むウエイトトレーニングに精通している男子体育大学生を対象に,[1] 通常のスクワットと動作開始時の下腿部の角度の異なる2種類の片脚スクワット,[2] 踏込脚における台の高さを変化させた(0-40 cm)片脚スクワットを実施した。三次元自動動作分析システムおよびフォースプラットフォーム用いて,各試技における身体座標値と地面反力を計測し,さらに,表面筋電図計測器を用いて,主要筋群における表面筋電図を導出し,骨盤の挙上や筋の動員を評価する指標を算出した。主な結果としては,[1] 下腿部を立てた姿勢(下腿部を地面に対してできるだけ垂直に保持した姿勢)では,骨盤の挙上動作が素早くなり,それに関与する股関節外転筋群・体幹側屈筋群の動員が大きくなること,また,[2] 低い台高において,骨盤の挙上速度や股関節外転筋群・体幹側屈筋群の発揮パワーが大きいこと,一方でこれらがより顕著に導き出される台高には個人差があること,などが示された。本研究の結果は,片脚スクワットにおいて骨盤の挙上動作を導き,それに関与する筋群を特異的に強化するための方法論的な原則を提示するものである。
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