研究課題/領域番号 |
26882008
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
韓 松伊 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (80729541)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | エネルギー代謝 / 転写因子複合体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、CREBHを中心とした転写因子間クロストークとともに代謝産物の変化がもたらす転写環境の変化を明らかにすることである。平成26年度は、CREBHによる生活習慣病改善効果における生体内代謝産物の変化について解析するため、メタボローム解析により物質の流れを網羅的に解析した。また、CREBH標的遺伝子の特定のため、ChIPアッセイや免疫沈降法により、CREBH複合体の精製を試みた。 CREBHの生体内作用機序や意義を探るため、生体材料(マウス)を用いた実験を行った。CREBHが主に機能し、栄養代謝にも重要な役割を果たす、マウス肝臓を用いたChIPアッセイを行い、CREBH標的遺伝子の解析を行った。その結果、いくつかの既存のCREBH制御遺伝子上にCREBHがリクルートされることを明らかにすることができた。今後はChIP-seq解析等により、CREBH標的遺伝子を網羅的に解析する。また、HAタグ付きCREBHをアデノウィルスを用いて発現させた、マウス肝臓からHA抗体を用いて免疫沈降を行った。その結果、CREBHと相互作用するタンパク質を複数確認することができた。現在、CREBH複合体の精製が終了し、タンパク質の同定を行っている。これらの成果により、CREBHとタンパク質間クロストークを行う因子や、制御遺伝子を網羅的に解析することが可能になったことは、CREBHの生理作用を解明する上で重要なステップになると考えられる。 CREBHによる代謝産物の変化がもたらす転写環境の変化を明らかにするため、メタボローム解析を行い、現在プロファイリング中である。CREBHと密接な関係にある、PPARaやFGF21とのダブルノックアウトマウスの作製に成功し、今後さらなる生体内作用機序を明らかにすることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、生活習慣病改善効果のある転写因子CREBHとクロストークする因子群の同定と代謝産物の解析により、新たな生活習慣病の治療標的を同定し、治療法を確立することを目指している。平成26年度は、マウス肝臓内でCREBHとクロストークする因子群の精製手法を樹立し、CREBH複合体の同定を進めることができた。さらに、マウス肝臓内でCREBHが制御する遺伝子上へのリクルートを確認することができた。これらの成果により、CREBHを中心とした、転写因子間クロストークの生体内作用を網羅的に解析し、その機序を明らかにすることができると考えられる。また、生体内におけるCREBHによる代謝産物の解析や、CREBHの標的で重要な役割を果たすファクター(PPARa、FGF21) のダブルノックアウトマウスの作製により、更なる研究進展が見込まれるため、今年度の研究達成は十分であったと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在解析中のCREBH複合体の同定や、CREBH制御遺伝子領域の網羅的解析が終了し次第、個々の因子とCREBHの作用機構だけでなく、複合体としての作用機構や生理的意義についての研究をさらに進める予定である。これらの解析により、今まで明らかになれていなかったCREBH活性化因子の作用メカニズムや、エネルギー代謝におけるCREBHと分子間ネットワークの詳細を示すことが可能になると考えている。 さらに、生体内作用を明らかにするため、マウスを用いたin vivo CREBH活性化評価機構(in vivo cleavage activity assay)の開発、遺伝子改変マウスと生活習慣病モデルマウスでのネットワーク形成の検討、栄養状態における分子間ネットワークの変化の解析を進めていく。これらの研究により、生活習慣病改善におけるCREBHの作用機序と、新たな生活習慣病治療薬に繋がる手がかりを見つけられると考えている。
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