本研究は常時に撮影された衛星マルチセンサ画像と地理空間情報を用いて,自然災害後に緊急撮影された衛星画像と組み合わせた被害把握手法を開発することが目的である。 本年度はマルチセンサ画像から都市情報を抽出する手法の開発を行っていた。高解像度のL-bandをもつ航空機Pi-SAR-L2合成開口レーダ(SAR)画像を用いて,水平・垂直偏波情報による土地被覆分類を行った。撮影日に合わせた現地調査の結果と比較することで,市街地,田畑,芝や空港の滑走路などの異なる土地被覆におけるマイクロ波の反射特性を把握できた。それらの反射特性を用いて,オブジェクトベースでの教師付き土地被覆分類を行った。また,2014年5月に打ち上げられたALOS-PALSAR2画像を用いて,Pi-SAR-L2で行った処理を適用し,画像の解像度による精度の影響を検討した。 SAR画像における建物の倒れ込み量が入射角と建物高さに比例する特徴を用いて,建物輪郭データと併用して建物高さの推定を行った。1時期のSAR強度画像から反射の強い倒れ込み範囲を抽出し,建物輪郭から作成されたテンプレートで検索することで低層建物の高さを自動的に抽出する手法を開発した。高層建物では側面の素材や立地角によって反射強度が弱いため,強度情報のみで倒れ込み範囲の抽出が困難であった。そのため,2時期のSAR画像を干渉して得られた位相情報から高さの推定を試みた。これらの手法をアメリカ・サンフランシスコと東京中心部を撮影したTerraSAR-X画像に適用し,デジタル地表モデルを用いて精度の検証を行った。
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