研究課題/領域番号 |
26882010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷 友香子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70735422)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 孤食 / 食行動 / 肥満 / 低体重 / うつ / 高齢者 |
研究実績の概要 |
配偶者との死別、子どもの独立、定年による離職などにより、高齢者の孤食が危惧されている。食事は日常的な活動であり、他者とともに食事をするということは、単なる栄養補給に留まらない身体的・精神的な健康を保つ上で重要な要素である。孤食と健康影響については、小児および青年を対象とした研究で、肥満や不適切な栄養摂取、うつ症状など心身への影響が報告されているが、高齢者を対象とした研究はきわめて少ない。そこで、大規模な日本の高齢者を対象としたコホート研究である日本老年学的評価研(JAGES:全国31自治体、約10万人の要介護認定を受けていない高齢者が対象)の横断データおよび縦断データを用いて、高齢者の孤食の割合、孤食と欠食、野菜・果物の低摂取頻度、肥満、低体重、うつとの関連を解析した。孤食の割合を解析した結果、同居群の男性5.1%、女性7.9%、独居群では男性87.9%、女性81.7%の対象者が孤食となっていた。孤食と食行動、BMI、うつとの関連を解析した結果、男性では独居で孤食であることが欠食、野菜・果物の低摂取頻度、肥満、うつのリスクとなり、世帯構成に関わらず孤食であることが低体重のリスクとなることを見出した。一方女性では、同居で孤食であることが欠食、野菜・果物の低摂取頻度、肥満と関連すること、世帯構成に関わらず孤食であることがうつの発症と関連することを見出した。これらの結果について国際誌に2本、国内誌に1本論文を投稿中である。また、孤食と死亡や要介護認定との関連、血圧や血糖などの生体指標との関連を検討するためにJAGESの2010年横断データにその後3年間の死亡および要介護の有無を結合したコホートデータ、2010年横断データに健診データを結合したデータの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画としていた「日本の高齢者の孤食の実態把握」については約10万人の高齢者が対象としたデータを用いて孤食割合を算出することに成功している。もうひとつの「孤食が及ぼす健康影響の解明」については、孤食と不適切な食行動、肥満、低体重、うつとの関連を解析し、学会発表(日本公衆衛生学会、日本疫学会)および国際誌および国内誌に論文投稿を行っている。また、孤食と死亡や要介護認定との関連を解析するためのコホートデータの整備を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
「孤食が及ぼす健康影響の解明」のために、整備したコホートデータおよび健診データ付きデータを用いて孤食と死亡率、要介護認定、高血圧、高脂血症、糖尿病、生活機能、認知機能、幸福感との関連について検討する。さらに、孤食となりやすい要因として、性別、年齢、地域、世帯構成、婚姻状態、居住環境、震災、所得、教育歴、就労、活動状況、社会活動、ソーシャルキャピタルとの関連を明らかにする。
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