研究実績の概要 |
食事は社会的な活動の場であり、単なる栄養素の摂取だけでなく、精神的な健康を保つ上で重要な役割を担っている。これまでの研究により、孤食が高齢者の低体重や不健康な食行動に陥る可能性、さらにうつ症状発症のリスクとなることを見出してきたが、死亡との関連については不明であった。また、高齢者の孤食が及ぼす健康影響は性別や世帯(同居または独居)によって異なることが考えられるが、これらの点を考慮した研究は国際的にもきわめて少ない。そこで、申請者が事務局を務めている大規模な日本の高齢者を対象としたコホート研究である日本老年学的評価研究(JAGES:全国の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者が対象)の縦断データを用いて高齢者の孤食と死亡との関連を性別および世帯を考慮して検討した。3年間の追跡期間の間に、71,781名の対象者のうち3,217 名(男性2,074 名、女性1,143 名)の死亡が確認された。男性では、「共食&同居」群に比べて「孤食&同居」群では死亡のリスクが1.47倍であった(年齢、身体的健康状況、社会経済的状況を調整済)。一方「孤食&独居」群では「共食&同居」群に比べて死亡リスクが1.18倍であった。一方女性では有意な関連は認められなかった。本研究結果より、高齢者の孤食が死亡のリスクとなる可能性が示唆された。今後は配食サービスだけでなく、家族や友人、近隣の人達をまきこんで共食を推奨することや、自治体で会食やコミュニティレストランを開催することが高齢者の健康維持に効果的かもしれない。また、同居していても孤食の男性の死亡リスクが高かったことから、独居者だけでなく同居者もターゲットとした対策を検討することが重要かもしれない。
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