本研究課題は、ヒトの生活の日常的環境である家における「物」の配置換えに見られる規則性が、ヒトの共同活動を支える「他者の意図の理解」が発達するための生態学的基盤となっていることを検証するものである。 本年度は、当初の計画通り、既に取得済みのデータを用いて、母子による遊び場面に注目し分析を行い、「遊び」という特定のタスクのない共同行為においても、母子の行為が配置換えを可能にする遊離物の性質を軸にしたシステムとして発達していることを記述した。この結果は、The 18th International Conference on Perception and Action(知覚と行為の国際会議)にて「Observing development of the play system through block play」というタイトルで報告された。 また、上記の分析を補強するために、新たに1組の家庭において縦断的ライフログデータの収集を開始し、現在までにおよそ約300時間(約20h/m)の蓄積があり、コーディング及び分析を行っている。この結果は、平成28年度に31th International Congress of Psychology(国際心理学会)にて報告される予定である。 最後に、心理学における生態学的アプローチの創始者の一人であるJ.J.ギブソンのテキスト「エンカウンターに関する覚書」の翻訳および解説「“エンカウンター”を読む―不可避な未来の知覚、その制御としての行動」を学会誌生態心理学研究第8号に発表した。
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