研究実績の概要 |
昆虫病原性グラム陰性細菌 Photorhabdus luminescens は、スチルベン化合物 (E)-1,3-dihydroxy-2-(isopropyl)-5-(2-phenylethenyl) benzene (ST)を分泌する。この化合物は強い抗菌作用を有する有用化合物である。P. luminescensにおけるスチルベン骨格の生合成経路は植物のものとは大きく異なっており、これまでに2分子のポリケタイド鎖の縮合、環化を触媒する反応は数例しか報告されておらず、酵素の詳細な構造機能解析が行われた例は存在しない。特に、StlDの触媒する反応中、活性化されていない4位のメチレンからもう一方のポリケタイド鎖の1位への求核攻撃は化学的にも非常に興味深い。 そこで、本研究では、StlD-基質アナログ複合体結晶を含む X 線結晶構造解析により立体構造情報を取得し、詳細な酵素反応機構を解明することを目的とした。 野生型および、SeMet置換StlDの結晶についてフォトンファクトリーNW12A、NE3Aにて回折強度の測定を行った結果、野生型が2.0A、SeMet置換体が2.3Aの分解能で全体構造の取得に成功した。 StlDは活性中心残基として必要な3種のアミノ酸残基Cys126、His302、Asn337を有しており、その位置も他のKSと同様に保存されていた。 活性キャビティの大きさは受け入れられる基質から予想していた大きさよりも小さく、Thr96, Ile101, Glu154, Leu193, Ile262, Met 231など、活性部位を形成するアミノ酸残基に嵩高い残基が多く存在することで、活性キャビティの大きさを制限していた。現在、活性部位に存在しているアミノ酸残基に変異を導入し、その役割について検討を行っているところである。
|