研究実績の概要 |
昨年度までに確立した一般化線形モデル(GLM)を用いて、4718非必須遺伝子破壊株の形態異常を検出した所、従来(Ohya et al., 2005, PNAS)と比べて約2倍の形態異常が検出された。これによりGLMによって多くの特徴で高感度に形態プロファイリングが行えると考えられた。更に、1112必須遺伝子ヘテロ破壊株の細胞形態を取得し同様の解析を行った所、半数以上の株に形態異常が検出された。この中で特徴的な形態異常を示す遺伝子機能グループが300以上検出され、遺伝子機能と形態的特徴に相関関係があることがわかった。これらのことから非必須遺伝子だけでなく必須遺伝子を含めたゲノムワイドな標的予想を行うことが可能であると考えられた。 次に、野生型酵母に薬剤を処理したときの濃度依存的変化の解析を行った。様々な薬剤を複数の濃度で処理し、濃度依存的形態変化をGLMで回帰することで得られた濃度依存性の形態プロファイルを薬剤処理間で比較した所、機能的に関連した細胞内分子を標的とする薬剤の処理によって類似した形態変化が引き起こされることがわかった(Gebre et al., 2015, FEMS yeast res.)。これにより濃度依存性を仮定した線形モデルによって形態プロファイリングを行うことが可能であると考えられた。 最後に、薬剤処理と遺伝子変異の間または薬剤処理の間の相互作用を調べた。Ca2+処理とcls変異の相互作用を共分散分析モデルで検出した所、極めて多くの相互作用が細胞形態に検出された。相互作用の形態プロファイルに基づいてcls変異株を分類した所、従来(Ohnuki et al., 2007, Eukaryot. Cell)よりも多くのグループに分けられ、遺伝子機能との相関が検出された。同様にしてHU処理とConCA処理の相互作用を重回帰モデルで検出した所、非常に多くのパラメータで薬剤処理間の相互作用が検出された。これらの形態プロファイルは複雑な効果のある薬剤の作用機序解明や標的予想の足掛かりになると考えられた。
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