研究課題/領域番号 |
26882020
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
林 晋一郎 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (10732381)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 筋分化 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
運動や外傷による骨格筋損傷の修復と再生は、骨格筋幹細胞である筋衛星細胞によって行われる。筋衛星細胞は新たな筋線維の供給源となることから、骨格筋の恒常性を維持する上で質・数ともに重要であるが、その機能維持の分子機構は明らかではない。申請者はES細胞や癌幹細胞で幹細胞機能の維持に重要である転写因子、Klf5に着目した。Klfは、その幹細胞における重要性が数多く報告されているにも関わらず、筋衛星細胞での機能は全く不明である。そこで、申請者は筋衛星細胞の質と機能を制御する候補因子としてKlf5に着目し、骨格筋における発現とその機能および作用機序を解明することを試みた。
まず、骨格筋におけるKlf5陽性細胞の同定を試みた。培養骨格筋細胞株であるC2C12を用いた解析により、Klf5は増殖期の筋細胞ではあまり発現しておらず、分化誘導によりその発現が上昇することを明らかにした。また、マウス骨格筋組織を用いたKlf5の発現解析の結果、Klf5は筋再生誘導後の活性化筋衛星細胞(Pax7(+) MyoD(+))で陽性反応を示した。
次にC2C12を用いてin vitroにおけるKlf5の機能解析を行った。siKlf5処理によりC2C12の分化(筋管形成、筋特異的転写因子Myogeninの発現およびミオシン重鎖の発現)が抑制された。さらに、抗Klf5抗体を用いたChIP解析により、Klf5がMyogeninのプロモーター領域に結合し、直接Myogeninの発現を制御することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通り、骨格筋におけるKlf5発現細胞を同定し、培養骨格筋細胞を用いてKlf5の機能を解明したことは評価できると考えられる。現在in vivoにおけるKlf5の機能解析に必要な遺伝子組換えマウスの繁殖を進めており、順調に準備が整いつつある。また、本年度実験予定である筋衛星細胞の自己複製に対するKlf5の機能解析に必要な実験手技も取得済であり、本年度実施予定の研究も問題なく遂行できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者のこれまでのin vitroにおける研究結果から、Klf5は骨格筋細胞において筋分化を正に制御していることが明らかとなった。今後は、in vivoでのKlf5の機能解析を進める。まず、筋衛星細胞特異的にKlf5をノックアウトしたマウスを用いて、筋再生時におけるKlf5の機能を解析する。具体的には再生筋線維数や活性化筋衛星細胞数、線維化等で評価する。 次に、Klf5の自己複製能に対する作用を解析する。筋再生時において、筋衛星細胞は活性化した後、増殖・分化すると同時に自己複製し、その数を一定に保つ。そこで、単一筋線維培養法を用いて、Klf5が筋衛星細胞の活性化・増殖・分化時にどのように発現するかを解析する。次にレトロウィルスベクターを持ちいてKlf5あるいはドミナントネガティブKlf5を筋衛星細胞に導入し、Klf5の自己複製に対する機能を解析する。 一方、老化により筋衛星細胞の質が変化し、増殖能および自己複製能が低下することが報告されている。そこで老齢マウスを用いて、筋衛星細胞におけるKlf5の発現を解析し、老化による筋衛星細胞の質の変化とKlf5の発現様式の変化との関連性を明らかにする。
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