研究実績の概要 |
わが国は世界一の長寿大国となったが、免疫力の低下による高齢者の肺炎死亡率増加など、老化に関する課題も多い。そこで申請者は、老化に伴う免疫力の低下を食品成分により制御する可能性について、線虫(Caenorhabditis elegans)をモデル動物として研究を進めている。これまでにヒトに有益な保健効果をもたらすプロバイオティクスの一種ビフィズス菌やラクトバチルス属の乳酸菌が、線虫の老化を抑制し寿命を延長させることを発見してきた(Ikeda et al., Appl. Environ. Microbiol., 2007; 73: 6404-9, komura et al., Biogerontology , 2013; 14: 73-87)。そこで本研究は、その機構を解明するための糸口として、昨年度作製したトランスジェニック線虫(ビフィズス菌摂取時に顕著に発現増加することがマイクロアレイとRT-PCRで確認取れた遺伝子と GFP 遺伝子をつないだ線虫)に種々の菌を与え、GFPの誘導を調べた。その結果、ビフィズス菌やラクトバチルス属などのプロバイオティクスを与えるとGFPが顕著に誘導された。その一方で、病原菌(サルモネラ、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ)や寿命延長効果のみられない大腸菌では誘導されなかった。そのため、本遺伝子はプロバイオティクスに共通する特異的な菌体成分で誘導されることが期待される。
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