研究課題/領域番号 |
26882036
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井貫 晋輔 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (70736272)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫機能解析 / 生物有機化学 / ケミカルバイオロジー / 有機合成化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様な免疫調節を担う脂質抗原受容体の機能解析を行うため、特にナチュラルキラーT (NKT) 細胞を活性化する糖脂質受容体CD1dに注目し、受容体タンパク質に選択的共有結合形成能を持つ“共有結合型”CD1dリガンドの開発を目指している。 報告者は、CD1dに対する共有結合型リガンドを創製するために、報告されているhCD1dと糖脂質リガンドα-GalCerの複合体X線結晶構造解析を基に、α-GalCerを基本骨格とした構造展開を行うことを計画した。構造展開の指針を得るために分子シュミレーションソフトを用いて、上記の複合体X線結晶構造を解析し、共有結合形成のための反応性官能基の導入位置、また、さらなる活性向上を目指したタンパク-リガンド間の相互作用部位の探索を行った。探索の結果、反応性官能基の導入部位と新たな相互作用部位の候補を特定し、共有結合型リガンドのデザインを行った。特に新たな相互作用部位として、α-GalCerのアシル鎖とタンパク質間に親水性相互作用が期待できる部位が見出されたため、この位置に親水性官能基であるアミド構造を導入することを計画した。 上記のデザインを基に化合物の合成を行い、α-GalCerの側鎖にアミド基を介して様々な反応性官能基を有するα-GalCer誘導体を数十種類合成した。現在、合成した化合物の結合親和性をBLI(Bio-Layer Interferometry)法などを用いて、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共有結合型リガンドの化合物デザイン、合成は順調に進展している。特に合成に関しては、α-GalCerの側鎖アシル基にアミド基を導入することで、多様な反応性官能基を有する誘導体を効率的に合成することができた。また、これらの誘導体は両親媒性であるため通常の条件では精製が困難であったが、種々の検討を行った結果、簡便かつ回収率の高い精製法を確立した。 さらに共有結合型リガンドとCD1dとの結合親和性の評価を共同研究先と共に示差走査型蛍光定量法(DSF)、等電点電気泳動法(IEF)やBLI(Bio-Layer Interferometry)法を用いて行った。BLI(Bio-Layer Interferometry)法を用いた場合、興味深い結果が得られたため今後検討を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、共有結合型リガンドとCD1dとの結合親和性を評価する系の確立を目指し検討を継続する。現在、合成した化合物を用いて、共同研究先と共に以下の検討を行っている。①リガンドとCD1d間の共有結合反応の有無を確認するための速度論的な知見を取得する目的でBLI(Bio-Layer Interferometry)法を用いたCD1d-リガンド間の相互作用解析を行っている。②共有結合型リガンドの活性の有無、また共有結合による安定化によってサイトカインバランスにどのような影響を与えるかを解析する目的で、リガンドを細胞に作用させて、細胞から放出されるサイトカインを検出するサイトカインアッセイを行っている。③CD1d-リガンド間の共有結合の有無を直接的に質量分析装置によって検出するためにnative Massを用いたCD1d-リガンドの複合体解析を検討中である。さらに、共有結合型リガンドの結合部位を特定するために質量分析装置を用いた解析を計画している。 上記の検討により取得した共有結合型リガンドに標識基の導入を行う予定である。これまでに報告されている構造活性相関研究を基に反応性官能基の導入位置などを検討する。さらに取得した標識化リガンドを用いて、CD1dリガンドおよびタンパクとの複合体の細胞内挙動を観察し、CD1dリガンドの細胞内動態を観察する。
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