研究課題/領域番号 |
26882037
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 央二 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 研究員 (00736861)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 身体活動 / 余暇時間 / 阻害要因・折衝 / 心理的健康 / 文化比較 / カナダ / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
国内において身体活動の促進を考える上で、これまで促進要因という正の面に焦点が置かれてきたが、逆の負の面である阻害要因は等閑視されてきた傾向にある。促進要因と阻害要因は基本的には独立するものであり、両者の視点を取り入れることで初めて効果的な身体活動の促進が可能となる。また、阻害要因や阻害要因の折衝方法が早くから注目されてきた国外では、文化によって阻害要因や折衝方法が異なることが近年報告されている。そこで、本研究では二つの日加文化比較研究を通して、①日加間における身体活動の阻害要因ならびに阻害要因折衝の類似・相違点を明らかにすること(研究1)、②身体活動の阻害要因と阻害要因折衝が人々の心理的健康に与える影響を文化別に精査すること(研究2)を目的とした。
平成26年度は、関連文献のレビューと研究1の調査を実施した。関連文献のレビューから、阻害要因には個人的、対人的、構造的の三要因が存在し、現実的にはそれらが相互に絡み合っているものの、基本的には階層的な関連性を持っていることが確認された。一方で、阻害要因折衝は認知的と行動的の二要因に区別されるものの、全体的に阻害要因折衝が自由時間における身体活動の参加頻度にポジティブな影響を与えることが確認された。これらの関連文献のレビュー結果の一部を、並行して執筆が進められていた研究論文に取り入れ、国内学会誌に投稿した。
研究1の調査はSurveyMonkey Audienceを用いて、20歳以上の日本人とカナダ人を対象にオンラインでの質問紙調査を実施した。日本人324名、カナダ人327名の合計651名から有効回答を得ることができた。2月には、カナダのアルバータ大学にて、研究協力者であるDr. Gordon J. Walkerと収集したデータの記述統計分析結果や今後の分析方法等について議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請段階では研究1の調査は直接配布直接回収の質問紙調査法を用いて日本とカナダで実施する予定だったが、研究協力者Dr. Gordon J. Walker(アルバータ大学)との議論の結果、より効率的かつ先進的なSurveyMonkey Audienceを用いたオンライン調査を用いて実施することにした。その結果、SurveyMonkey Audienceの担当者との綿密な打ち合わせ等の必要が出てきてしまったため、調査実施時期が予定よりも遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(平成27年度)の研究として、まず初めに昨年度(平成26年度)に実施した研究1の調査結果を分析するためのソフトウェアの選定を行う。関連文献のレビューからNVivoもしくはLeximancerといった内容分析ソフトウェアを購入する予定である。購入したソフトウェアを用いて、研究1の調査結果を内容分析、そして統計分析をし、研究1の目的である日加間における身体活動の阻害要因ならびに阻害要因折衝の類似・相違点を明らかにする。
研究1の結果を基に、研究2で使用する質問紙調査項目を選定する。昨年度に実施した関連文献のレビューからWilhelm Stains et al.(2009)の阻害要因・折衝尺度を研究1の結果を基に修正し、援用する予定である。また、心理的健康に関する尺度として、Spiers and Walker(2009)が同様のテーマで用いた幸福観(Lyubomirsky & Lepper, 1999)、平穏さ(Lyubomirsky & Lepper, 1999)、生活の質(Perceived Wellbeing Index, 2006)の3つの尺度を援用する予定である。研究2の調査は研究1の調査と同様にSurveyMonkey Audienceを用いたオンラインでの質問紙調査を実施し、研究2の目的である身体活動の阻害要因と阻害要因折衝が人々の心理的健康に与える影響を文化別に明らかにする予定である。
また、研究2の調査実施と並行し、研究1の調査結果をまとめて、南オーストラリア大学で開催されるAustralia and New Zealand Association for Leisure Studies Conferenceにて発表予定である。本発表で得られたフィードバックを基に、研究1の論文投稿の準備を進める。
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