本研究の目的は,ヒトの身体運動において熟練していくとはどういうことかを解明することであった.対象とした運動は,卓球においてボールが複数の方向へ乱順に投射される課題に応じて,複数の動作を連続的に切り替える打球動作であった.6種類のボール投射間隔を設け,熟練者と初心者の動きの動作解析を行った.この結果,ボール投射方向の切替にうまく対応できる投射間隔は,初心者と比較して熟練者の方が短かかったが,熟練者であってもうまく対応できる投射間隔の限界があることも明らかになった.すなわち,熟練していくとは,自身の技能レベルによって規定される時間の壁を乗り越えていくことであることが示唆された.
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