研究課題/領域番号 |
26882048
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
増田 紘之 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助手 (10738561)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 骨格筋適応 / 糖・脂質代謝 / ラット / 運動 / Akt / AMPK |
研究実績の概要 |
持久性運動を行うと、骨格筋では、ミトコンドリアが増加するので、糖質や脂質を代謝する能力が向上する。これらの代謝適応は持久力の向上や、糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を予防する効果をもたらす。骨格筋の糖・脂質代謝を高めるためには、乳酸性作業閾値(LT)強度以上の持久性運動が有効と考えられてきた。一方、高強度・短時間運動は、LT強度の持久性運動に比べて運動量が少ないにも関わらず、十分な代謝適応を引き起こす。そこで本研究では、高強度・短時間運動が骨格筋代謝適応をもたらす分子機序を解明することを目的とした。Aktキナーゼ(Akt)に着目し、Aktがどの程度の相対強度から活性化されるか、またAKt以外に高強度運動特異的に活性化される情報伝達経路が存在するかを検討する。今年度は、先ずLT強度ならびにLT強度未満の運動強度について検討した。 ラットにLT強度未満の低強度運動(10m/分、30分間)、ならびにLT強度に相当する中強度運動(17.5m/分、30分)を負荷し、各運動直後に下肢骨格筋を採取した。その後、AKt、ならびにAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)と呼ばれる、骨格筋代謝適応を与える働きの活性化指標である、AMPKの下流に位置するACC(Ser79)、TBC1D1(Ser237)のリン酸化状態を評価した。その結果、低強度ならびに中強度運動によって、遅筋であるヒラメ筋において、AKtのリン酸化に変化は無かった。ACC(Ser79)のリン酸化は、各々、74%および174%上昇した。またTBC1D1(Ser237)のリン酸化は22%および59%上昇した。したがって、低強度運動によってAMPKが活性化されると考えられる。本研究の結果は、LTに相当する運動強度からAMPKは活性化されると考えられてきた先行研究とは異なり、更に低い運動強度から活性化されている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては、AKtがどの程度の相対強度から活性化されるか、またAKt以外に高強度運動特異的に活性化される情報伝達経路が存在するかを確かめることを目的とした検討を行った。そして、これまで中強度運動から活性化され始めると考えられてきたAMPKが低強度運動から既に活性化されている可能性が出てきた。この結果は、LT強度に相当する持久性運動が骨格筋の代謝適応をもたらすためには有効であることを必ずしも説明できるものではない。したがって、持久性運動の有効性を説明できる根拠を見直すきっかけになる新しい見解が得られたと考えられる。しかし本研究の目的である高強度・短時間運動が骨格筋代謝適応をもたらす機序に直接的に迫るものではないので、「やや遅れている」との評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Aktが中強度運動を超える高強度運動で具体的にどの程度の相対強度から活性化されるかを明らかにすると共に、高強度運動によりAktが活性化される仕組みを検討する必要がある。また、AMPKが低強度運動から既に活性化されているとの新しい仮説を下に、低強度運動時における遺伝子発現の変化についても、検討したいと考えている。
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