本年度は、受傷後の成長に影響を及ぼす心理要因を検討することを目的として調査を行った。前年度の結果を受け、ここでは自己への気づきや怪我の受け止め方の変化と心理的成長の関係について質問紙調査を用いて検討した。対象者は、復帰までに1ヶ月以上を要した受傷経験のある大学生アスリートであった。質問紙は、受傷アスリートの気づき尺度(投稿準備中)、脱執着的対処尺度(辰巳、2009)、日本語版外傷後成長尺度(宅、2010)を用いた。 その結果、リハビリテーション過程において、復帰までに気づきおよび脱執着的対処得点の向上が見られた。また、外傷後成長高群の方が受傷直後および復帰前の気づき得点、復帰前の脱執着的対処得点において有意に高い得点を示した。この結果からは、受傷後の成長感は気づきや受容の変化(深まりや向上)だけではなく、気づきの程度が高い者に見られる特徴であることが考えられた。そして、アスリートは受傷後だけでなく、日々の練習環境においても身体や心理に対する気づきを高めるために、主体的に競技に取り組む必要性が示唆された。 今後は、受傷後に成長を感じたアスリートが受傷中に自身の身体やこころとどのように向き合っているのかを詳細に検討する必要がある。そのために、受傷アスリートへの面接調査や相談事例の分析を通して時系列的に詳細な情報を提示すること、受傷アスリートの体験を測定する尺度の精度を高めることが求められる。
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