現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,第1回目調査で「大学生」,「就業者」,「主婦」といった活動カテゴリーを念頭に置き,それぞれの基本属性の特徴,活動状況の把握と傾向分析,今後のライフコースの設計を検討し,第2回目の調査で家庭内における意思決定プロセスやそこでの裁量の実態を明らかにしていく予定だった。 しかし第1回目の調査で,普段の生活の中で社会貢献活動に携わる女性が多いことが明らかとなったため,第2回目の調査で「社会貢献活動」にフォーカスして検討することとした。これによって「再生産領域」を家庭内に限定せず,社会的に拡大させて特徴づけることが可能となり,しかもイラン女性が携わる「生産領域/再生産領域」の全体構造の解明が期待される。 このように,分析視角や調査対象を検討し直し,即座に調査設計に反映させたことで,現代イランの社会コンテクストから以下の論点を掴みつつある。一つはコミュニティベースの慈善活動がハレとケの両方をカヴァーしうるよう組織化され行われていること,第二にイスラームに由来する慈善活動が社会保障制度や公的教育制度の間隙を埋める役割を果たしていること,第三にかかる状況はイスラーム共和制という独特の政体の下で活性化していること,そして様々な女性の活動ニーズをカヴァーし,且つ女性の潜在能力が有機的に活用されていることである。 「イラン女性について生産領域と再生産領域という両側面からのアプローチを通して,その現代的特徴の解明」を目指すという本研究の目的意識をより深化させる形で調査が進展している。また文献ベースの調査についても,イランにおける社会貢献組織に関する法制度や量的資料の収集・分析を順調に進めている。 以上より,本研究は当初の計画以上に進展しているものと判断される。
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