本研究では、中国雲南省タイ族自治州に居住するタイ族の「貰い子」について現地調査をもとに考察を行った。それにより以下のことが明らかとなった。1980年代以降、当地の観光化、都市化が進む中で、漢族が多数流入することにより、「貰い子」も従来の同民族間ではなく漢族から養取するケースが増加している。その多数は計画出産政策に違反した女児である。これらの「貰い子」は生後数日から数ヶ月で貰い受け、実子として届け出されている。タイ族においては、血縁関係より「子どもを持つこと」が重視され、この背景には当地で信仰される上座仏教の宗教実践やそれに基づく社会規範が影響していることが指摘できる。
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