研究課題/領域番号 |
26883010
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吉田 一史美 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 専門研究員 (80736869)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 米国 / 養子縁組 / 人工妊娠中絶 / 代理出産 / Infant Safe Haven |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本と米国における「出産女性と出生児の離別」に関する社会的合意と政策的意図の構造比較を通して、現代米国社会が直面している生殖をめぐる倫理的課題から得られる知見を、日本の生命倫理にかかわる各制度研究に還元することにある。具体的な作業としては、1970年代以降の米国における母子関係の断絶と構築にかかわる3つの事象、①周産期の養子縁組、②代理出産契約、③Safe Haven Lawをめぐる法政策および社会運動の言説分析を行い、米国の「出産女性と出生児の離別」に関する現代史を記述する。これに日本の代理出産、特別養子縁組、こうのとりのゆりかごをめぐる歴史的背景と現状に関する考察を加え、比較検討を試みる。 2014年度の主な研究実績は以下の3点である。 (1)本研究課題の研究拠点であるカナダのマギル大学にて1回目の文献調査、また米国議会図書館において1回目の文献調査を行った。 (2)専門家向けの商業雑誌『里親と子ども』(第9号)における養子縁組支援関連特集において、出産女性と出生児の離別の方法、手続き、時期などのあり方に関する論文を発表した。現在の「養子縁組あっせん法」の試案に関連して、国内における出産女性と出生児の離別に関する問題提起を行った。 (3)日本の養子制度、性教育、人工妊娠中絶に関する研究報告を、多様性に関する国際学会(Joint AESA/IAIE conference, 2014)、学際的法学研究の国際学会(Annual International Conference on Interdisciplinary Legal Studies, 2015)にて行い、本研究で行う日米の比較検討に有益な視座を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がおおむね順調に進展している理由は、以下の3点である。 (1)本研究課題の研究拠点であるカナダのマギル大学にて、1回目の文献調査を行った。また、米国議会図書館において1回目の文献調査を実施した。カナダおよび米国での文献調査は、本研究課題の順調な進捗を示している。 (2)専門家向けの商業雑誌『里親と子ども』における養子縁組あっせん関連特集において、出産女性と出生児の離別の方法、手続き、時期などのあり方に関する論文を発表した。「養子あっせん法」試案に関連して、国内の出産女性と出生児の離別に関する問題提起を行うことで、本研究課題の社会的重要性を示した。 (3)日本の養子制度、性教育、人工妊娠中絶に関する研究報告を、多様性に関する国際学会(Joint AESA/IAIE conference, 2014)、学際的法学研究の国際学会(Annual International Conference on Interdisciplinary Legal Studies, 2015)にて行い、他国の研究者との議論を通して本研究で行う日米の比較検討に有益な視座を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の本研究は、以下の方策およびスケジュールで推進する予定である。 【前期】 4-5月:前年度に収集した資料の分析を行う。6-8月:前年度に引き続き、カナダ・マギル大学にて医療社会学・生命倫理等の関連分野における先行研究のレビューを行う。米国ワシントンD.C.の議会図書館と国立公文書館にて、養子縁組・代理出産・Safe Haven Lawsに関する資料収集、養子の生み親の活動団体Concerned United Birthparents等の各関連団体に聞き取り調査を実施する。9月:国際ジェンダー学会にて、米国のSafe Haven Lawsをめぐる倫理的議論に関する研究報告を行う。 【後期】 10月:米国における周産期の養子縁組支援に関する論文を、学会誌『日本保健医療社会学』に投稿する。11-12月:米国にて補完的調査を実施し、またニューヨーク市のコロンビア大学Carol Sanger教授との研究交流を行う。1-3月:日本の養子縁組と人工妊娠中絶の歴史と現状に日米の比較考察を加えた論文を執筆、米国の専門家向け雑誌『Adoption Quarterly』に投稿する。
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