2015年2月に、ロシア連邦サンクト・ペテルブルグ行った現地調査をまとめて、日本語での研究報告を1回、英語およびロシア語での報告を3回行った。調査の結果、ペテルブルグの福者クセーニヤに対する崇敬は、組織宗教が関与しない民衆宗教として発生したにもかかわらず、組織宗教から権威を認められ、社会主義時代を生き延びたことを明らかにした。 また、平成27年度は9-10月および3月の2回に分けて、ロシア連邦モスクワ、サンクト・ペテルブルグ、エカテリンブルグの3都市でフィールドワークおよび資料収集を行った。9-10月にかけての調査では、クセーニヤ崇敬に関する調査の補足(インタビュー)とモスクワの福者マトローナに関する資料収集、およびニコライ二世一家に関する文献収集と予備調査を行った。モスクワでは、図書館での資料収集に加えて聖チーホン人文大学教授のゲオルギー神父ほか、モスクワ総主教庁列聖委員会メンバー、ロシア人文大学のセメネンコ=バシン教授らの協力を得て、インタビューを行ったほか、参照すべき資料や人物についての助言を得た。また、エカテリンブルグでは主教区神学校の研究者や、主教区のジャーナリスト、および90年代のニコライ二世一家の崇敬に携わった複数の人物に対してインタビューを取ることができた。この調査に基づいて、日本語および英語でそれぞれ一回ずつ、研究会・学会報告を行った。 さらに、モスクワとエカテリンブルグで行った3月の調査では、9-10月の調査で得られた情報をもとに、ニコライ二世一家の崇敬について、より踏み込んだ調査を行うことができた。スヴェルドロフスク州図書館およびエカテリンブルグ府主教アーカイヴにおける資料収集に加え、郷土博物館の専門家や、ニコライ二世一家崇敬において、中心的役割を果たしている複数の人物にインタビューを行った。
|