本研究は、確率論革命とも呼ばれる17世紀中葉以降の「蓋然性」と「真実らしさ」概念の変容が、いかにして、バウムガルテンの美学の成立のための条件となったのかを明らかにすることを目的とするものである。その結果、近世においては「観客への効果」として主観的に規定されてきた両概念が、確率論革命を経て「真理の度合い」として量的に再規定されたこと、このことが、完全なる真理ではなく真実らしさを実現することしかできないとされる美学を「学問」として、さらには「方法論」として可能にしたひとつの重要な論理的契機となったことが明らかにされた。
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