研究実績の概要 |
本研究は、フランスの十六世紀の歴史記述論において、歴史の真実とは何かを考える上で議論の的となった、古代以来虚偽や虚言を含むと見做されてきた歴史家たちを対象に、当時の真実と虚偽の境界を探り、かつ詩や物語に関する同時代の虚構論との関係を明らかにするものだった。 研究の成果として、一つには、トロイ戦争の真の歴史を書いたと称されるフリギアのダレスの『トロイ滅亡記』(実際は古代末期の偽作)のフランスにおける受容を、特に仏訳者シャルル・ド・ブルグヴィルの論説を主な対象としてに分析した。(『桜門論叢』第90巻所収) また一つには、歴史書かはたまた歴史小説風の哲学書かで論の分かれていたクセノフォンの『キュロスの教育』について、フランスを中心にした受容のあり方をテーマに論文を執筆、投稿した。これは間もなく刊行される予定である。(Seizieme siecle, no. 12近刊)
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