最終年度である本年度もひきつづきナボコフの北米における受容についての調査をおこなった。 所属研究機関をつうじて、アメリカで出版されていたロシア語定期刊行物『新しいロシアのことば』のマイクロフィルムを海外よりとりよせ精査したころ、ナボコフによる非常にめずらしい投書を閲読することができた。 アーカイヴ調査としては11月にワシントンD・Cの議会図書館の草稿部門、3月にケンブリッジのMITのインスティテュート・アーカイヴにて資料調査をおこなった。前者は出版社やセルゲイ・ラフマニノフとの書簡、後者はロマン・ヤコブソンとの書簡や周辺資料を調査した。また、並行して11月にはフィラデルフィアでおこなわれたASEEES、3月にはケンブリッジでおこなわれたACLAに参加し、研究者たちと交流することで知見を深めることができた。国内では8月に幕張でおこなわれたICCEESに参加して同様に海外の研究者から情報収集をおこなった。 成果報告として、5月に東京創価大学でおこなわれた日本ナボコフ協会大会にて「ナボコフとロフリン」を口頭で発表した。加えて11月に愛知学院大学でおこなわれた日本T・S・エリオット協会大会におけるシンポジウムにて「引用するのは「私」―ナボコフの場合」という口頭発表をおこなった。 アーカイヴ調査の成果の一部は「ナボコフとハーン トランス・アトランティックな想像力がトランス・パシフィック な想像力と出会うところ ――あるいは文学的バタフライエフェクト」として『れにくさ』6号に発表した。
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